エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
「すみません、すぐにデスクに戻ります」

 テーブルの上の雑誌を閉じると、野田さんは「いやいや」と手をひらひら振った。

「ここで見てても大丈夫だよ。別に(とが)めに来たわけじゃないし」

 野田さんはそう言うけれど、先日のこともあって、彼とふたりきりでいるのはちょっと気まずい。
 そんな私の気持ちを知ってか知らずか、野田さんは私の隣の席に腰掛けると、雑誌に視線を遣って言った。

乃愛(のあ)ちゃんも、こんな綺麗な花嫁さんになってみたい?」

 雑誌の表紙では、カラフルなブーケを持ったウェディングドレス姿のモデルさんが、幸せそうな微笑みを浮かべている。

「そうですね。このモデルさんのように美しく、とまではいかないでしょうが、やっぱり憧れはあります」

 正直な意見を伝えると、野田さんは目を細めた。

「いいねぇ、乃愛ちゃんの花嫁姿。このモデルさんは美人系だけど、乃愛ちゃんは可愛らしい感じだから、また違った魅力が出そうだな」

 そうかな……? そこまで自分に自信はないけれど。でも、せっかくお世辞を言ってもらえたので、笑みを返しておく。

「俺もさ、あるんだよね。結婚願望」

 すると、話があらぬ方向へ行ったので、私はドギマギしながら「そうですか」と頷いた。
 野田さんがずいっと身体を近付けてくる。距離の近さに恐怖を覚える私に気付く様子もなく、いつもの彼らしくない、焦ったような表情を浮かべていた。

「俺、前から乃愛ちゃんのこと、いいなって思っててさ」

「え?」

 驚く間もなく手を取られて、恐怖がより色濃くなる。息が止まったみたいに苦しい。
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