エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
 ふたり並んで無言で廊下を進み、エレベーターに乗り込む。
 御堂課長が企画部がある階とは違う階数のボタンを押した。

「あれ、フロアに戻らないんですか?」

 私を見る御堂課長は、深刻そうな表情をしている。

「今の状態では働かない方がいい。医務室で休め」

「えっ、別に大丈夫ですけど」

「大丈夫なわけがないだろう。顔が真っ青だ」

 そう言われて、私は自分の身体がふわふわと頼りない心地でいるのに気付いた。

「すみません、貧血かもしれません」

「大きなストレスが掛かった後だ。無理もない」

 エレベーターが案内音と共に止まった。
 御堂課長に身体を支えられながら、医務室へと向かう。
 途中で誰かに見られでもしたら、ふたりの仲を誤解されてしまうだろうか。不安になったけれど、廊下は人通りがなく、誰にも見つからずに医務室へと入ることが出来た。

 御堂課長が室内にいた看護師さんに、私が貧血を起こしたことを説明する。すぐにベッドに寝かされて、ひとまず休むことになった。

「また後で様子を見に来る。今日は早退扱いにしておくから、もし具合が悪いようなら、このまま帰ってもいい。藤島さんの持ち物は、早野(はやの)さんに頼んで届けてもらうようにするから」

「何から何まで、すみません」

 いつも忙しい御堂課長に、いっぱい迷惑を掛けてしまった。

「気にするな。藤島さんに非はない」

 優しい言葉を残して、彼は医務室を出て行く。それでも申し訳なくて、私はドアの閉まる音を聞いてから、ため息を吐いた。
 ベッドに横になったら、どっと疲れが押し寄せてきた。私は目を閉じると、そんなに間を置かずに眠りに就いた。
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