エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
「それはもしかして、前話してくれた中学生の時の出来事がきっかけか?」

 鋭い御堂課長に言い当てられて、私は苦笑した。

「はい。東京旅行から帰ってきた後、一日寝込んでしまって。男の子たちに絡まれたことが、思った以上に怖かったんですよね」

 両親には、男の子たちに怖い思いをさせられたことは話していない。道で転んでしまったところを、お兄さんに助けてもらったとだけ伝えていた。だって、余計な心配をさせたくなかったもの。
 だからふたりは、寝込んだ私を見て、単に旅行の疲れが出ただけだと思っていたみたい。だけど、本当は違う。

「そうだったのか……つらかったな」

 御堂課長の優しい声音が、私の心にじわりと沁みる。私は泣きたくなるのを堪えて、か細く息を吐いた。
 この時にはもう、自分の気持ちに気が付いていた。

――私は御堂課長に惹かれている。

 一見クールで厳しそうだけど、本当は穏やかで頼りがいのある彼の傍に、ずっと居たいと思う。

「藤島さん、大丈夫か?」

 黙り込んでしまった私に、御堂課長が声を掛ける。

「あ、すみません。大丈夫です」

「嫌なことを思い出させてしまったな。もうすぐ藤島さんのマンションに着くが、ひとりで部屋まで歩けそうか?」

「……」

「しんどそうだな。部屋の前まで送ろう」

 私は一体、何をしているんだろう。
 もう二十四歳の社会人なのに、ちゃんとしないといけないのに、御堂課長の優しさにこんなにも甘えてしまっている。
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