エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
「征士さんは素敵な人です。だから、未熟な私では釣り合わないと思って、ずっと、焦るというか、不安になっていました」

「そうだったのか。しかし、乃愛は思い違いをしているようだな」

「えっ、どういうことですか?」

 意外な言葉に驚く私に、征士さんは微笑んで言った。

「乃愛が努力する姿は、周囲の人々に元気を与えている。本当に未熟な人間は、君のようなひたむきさを持ち合わせてはいないものだ。不安になる必要はないさ」

「そう、でしょうか」

「ああ。俺は今のままの乃愛で、充分魅力的だと思うが……君がもっと成長したいというのなら、ずっと見守っている。自分のペースで励んでいけばいい」

 目の前の征士さんの姿がぼやける。涙が滲む瞳で、私は「ありがとうございます」とお礼を言った。
 そのままの自分を認めてもらえたみたいで、嬉しかった。

「泣かないで、乃愛」

 征士さんはポケットからハンカチを取り出すと、優しい手付きで私の頬を伝う涙を拭いてくれた。
 くっきりとした視界が戻ると、すぐ傍に征士さんの整った顔があった。目が合い、彼の瞳がゆっくりと近付いてきて……私は自然と瞼を閉じた。そっと、唇が触れ合う。
 征士さんと付き合ってから、初めてのキス。私にとってはファーストキスでもある。温かく柔らかな感触に、私は全身が幸せな気持ちで満たされていくのを感じた。
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