エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
 と、篠崎さんが私の手元に目を留めた。

「あら? そのブレスレット、どこのブランドの物か知ってるわよ」

 彼女があるブランド名を口にする。

「そうです、そこのお店で買いました。よくご存知ですね」

「だって、父の会社のブランドだもの。私も経営に携わってるしね」

「えっ、そうなんですか」

 有名なジュエリーショップを経営する企業の社長令嬢。住む世界が違うな。

「経営についても、よく征士に相談して助けてもらったわ。反対に、私がMIDOUの戦略に口出しすることもあるんだけどね。だから、今日みたいな険悪な雰囲気にもなるけど、本当はお互いを理解し合える良い関係なのよ」

 嬉しそうに話す篠崎さんに、何も言えなくなってしまう。
 私は征士さんを頼ってばかりだけど、篠崎さんは彼と対等な立場で力になることが出来る。
 萎縮して俯く私に、篠崎さんは弾んだ声で提案した。

「そうだわ、これから征士とふたりでランチの予定なんだけど、あなたも来ない? Angeのお話を聞きたいわ」

「すみませんが、私も約束があるので」

 約束があるなんて、嘘だ。
 いつも沙希(さき)と先輩の円香(まどか)さんとランチしているけれど、別に絶対の約束じゃないし、他の人と食べても問題はない。
 なのにそうしなかったのは、これ以上、篠崎さんと話すのがつらかったから。

 篠崎さんは、私の断りを特に気にした風もなく、

「あら、そう。じゃあ私、そろそろ行くわね。プロジェクト、頑張って」

 ベンチから立ち上がると、綺麗な微笑みを残して去って行った。

「……」

 篠崎さんは、私が征士さんとお付き合いしていることを知らないのだろう。もし知っていたら、話題にするよね。
 言いようのない落ち込みを抱えたまま、私はカフェテリアへと向かった。
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