エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
 精神的な疲れのせいか、あまり食欲がない。今日のランチは、おろし蕎麦の小サイズにした。
 注文カウンターで蕎麦の載ったトレイを受け取り、沙希と円香さんのいる席へ向かう。

乃愛(のあ)、今日は遅かったね……って、元気なさそうだけど大丈夫? また貧血になっちゃった?」

 心配そうな顔の沙希に、作り笑いをして答える。

「大丈夫だよ。仕事が立て込んで、ちょっと疲れただけだから」

「そっか、色んな企画が同時進行しているもんね。お疲れさま」

 すると、円香さんが興味津々といった視線を向けてきた。

「Ange Premierのサンプルが上がってきたんでしょ? いいなぁ、私も見たかったな」

「とても素敵な仕上がりでしたよ。プラチナだと、より品がありますよね」

 私の言葉に、沙希も目を輝かせた。

「プラチナのダイヤモンドリング、憧れちゃうよね〜。私も婚約指輪と結婚指輪は、Ange Premierにしよっかなぁ」

 すかさず、円香さんのツッコミが入る。

「沙希ちゃんは、まずは相手を見つけないとね」

「ですよね〜。どっかに良い人いないかな~」

 おどけてキョロキョロと辺りを見回す沙希。明るいふたりとの会話に、さっきのモヤモヤが薄まってゆく。
 このまま気持ちを切り替えられたら良かったのだけど、

「私、Ange Premierのデザイナーが来社するところを見たわよ。篠崎葵さん、とんでもない美女よねぇ! 大人の色気がすごかったわ」

 円香さんが篠崎さんの話題を出したので、私の心にサッと影が差した。
< 67 / 108 >

この作品をシェア

pagetop