エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
 今日、四月一日の朝礼はいつもより長い。本日着任で異動してきた人の紹介があるからだ。

「以上二名が、今日から企画部で働くメンバーだ。皆、良くしてやってくれ」

 部長の言葉に拍手する私たち。でも、もうひとり異動してくる人がいるのを皆は知っている。その人は……。

「課長、まだ来ないのかな?」

 隣に立つ沙希が小声で耳打ちしてくる。
 そう、今日から企画部企画課の課長が新しく赴任する予定なのだ。先月、前任の課長の送別会をしたばかりで、デスクががらんと空いている。

「どんな人なんだろうね。あっ」

 と、フロアのドアが開いた。どうやら、新しい課長が遅れてやってきたらしい。
 中に入ってくる男性を一目見て、私の心がビクンと跳ねる。
 え、あの人は……!

「遅くなって申し訳ない。打ち合わせが長引いてしまった」

 ついさっき聞いたばかりのバリトンボイスで謝罪するその男性は、会社の入り口で私の指輪を一緒に探してくれた人だった。

「ああ、御堂(みどう)課長。待っていたよ。今ちょうど、異動してきたメンバーの紹介をしていたんだ」

 部長が笑顔で男性に声を掛ける。やっぱりこの人が――。
 私たちの前に進み出た男性が、キリッとした眼差しで自己紹介する。

「今日付で企画課課長職に配属となった御堂征士(せいじ)だ。これからよろしく頼む」

 端正な立ち姿と、堂々とした態度。御堂課長の持つ主役級のオーラに、部全体が圧倒されてしまう。一呼吸置いてから、ようやく大きな拍手が鳴った。

――この人、モデルさんじゃなくて、うちの社員だったんだ……!

 程なく朝礼が終わり、驚きを隠せない私は、どこかぼーっとしたまま席に着く。
 それからは、メールチェックや打ち合わせをこなし、あっという間に昼休憩となった。
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