エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
「そろそろ、本題に入るわね」

 ウェイトレスが部屋を出たタイミングで、篠崎さんが話を切り出した。

「はい」

「この間、あなたに初めて会った日のことなんだけど……」

 すると、篠崎さんは椅子から立ち上がった。

「篠崎さん?」

「ごめんなさい」

 突然、頭を下げる彼女に、私は何が何だか分からなくなる。

「あの、どうしましたか?」

「藤島さん、征士と付き合っているんでしょう?」

「それは……」

 何と答えたら良いのだろう。篠崎さんは征士さんの婚約者なのに。
 言葉に詰まる私に、篠崎さんは嘆くような声を出した。

「ああ、やっぱり! あなた、私と征士の仲を誤解しているのね」

「えっ?」

 誤解? どういうことだろう。
 篠崎さんは椅子に腰掛けると苦笑した。

「きっと、私と征士が許婚(いいなずけ)の関係だって噂を聞いたんでしょう? でも、安心して。あれは真っ赤な嘘だから」

「嘘……?」

 目を見開く私に、篠崎さんは優しい顔で応えた。

「ええ。確かに、お互いの両親との間で、私と征士を結婚させたらどうかって話は出てたけど、それは子どもの頃のことよ。私たちは幼馴染だから。まあ、成長してもふたりとも恋愛感情を持たなかったし、その話は立ち消えになったけどね」

 初めて聞く話に、驚きを隠せない。
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