エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
「あの、じゃあ、おふたりは恋人同士ではないのですか?」

 おどおどと尋ねると、篠崎さんは「勿論」と大きく頷いた。

「征士とは親友同然に仲が良いけれど、それだけよ。言ったでしょう? お互いを恋愛対象として見ていないの。征士の女避けになるから、あなたの会社では今でも嘘の噂が流れているんでしょうけど。あの人、昔から恋愛に興味がなかったのよね」

「そうなんですか?」

「ええ、結婚も嫌がっていたわ。社長の息子でなければ、生涯独身でいられたのにってね。そんな征士があなたに出会って、ようやく恋を知ったのよ」

「え……」

 別に私は、恋愛に興味のない征士さんが惚れ込むような優れた女性ではない。どうして私を好きになってくれたのか、今でも不思議なくらいなのに。
 黙り込んでしまう私に、篠崎さんがフフッと笑った。

「あら、信じられないって顔ね。じゃあひとつ、教えてあげるわ。あなたが持っていたブレスレット、征士に買ってもらったんでしょう? 夜にショップを貸し切りにしてね」

「はい」

「その日、征士に頼まれたのよ。『急で悪いが、君が担当している銀座店をこれから貸し切りにしてほしい』って。『そんなにすぐには無理だわ』って断ったんだけど、『そこを何とか頼む。好意を持つ女性が落ち込んでいて、何とか励ましたいんだ』なんて言うじゃない。あの征士が恋? って、びっくりしちゃったわ」

「えっ?」

 あの日、征士さんは知人のつてでお店を貸し切りにしたと言っていた。それは篠崎さんのことだったみたい。
 それよりも……征士さんがそんなことを言ったの? 本当に?

「でも、あの時は店舗視察のお仕事で、そんな、恋だなんて」

 戸惑いを隠せない私を、篠崎さんは微笑ましそうに眺めている。

「カッコつけてるのよ、きっと。あなたの前では大人の男でいたいんでしょうね。昨日、征士とデザインの件で会った時に、藤島さんとお付き合いしていると聞いたわ。もう、早く言ってよね。『俺の大事な恋人に、キツい物言いは二度とするな』ですって。私、結構ズバズバ言う方だから、デザインの指摘なんかして嫌な気持ちにさせちゃったかしら?」

「あ、いえ、そんなことは」

 あの時モヤモヤしたのは、篠崎さんに嫉妬していたせいだしね。
 それじゃ私、自分で勝手に勘違いしてひとりで落ち込んでたってこと?
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