エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
 店舗視察を終え、渋谷の裏路地を代々木公園方面まで歩いている時だった。

「お前、怖がられてんぞ〜」

「え〜嘘、お兄さんたち、怖くないよ? 君、結構可愛いね」

 何やら声が聞こえて、俺は斜め前方の道に目を遣った。
 地面に座り込む中学生くらいの少女と、彼女を取り囲んで下品な笑い声を上げる、こちらは高校生くらいの少年たち。

「……」

 少女は怯えた顔をしている。さすがに、放っておくわけにはいかない。
 俺は早足で彼らへと近付いた。

「嫌!」

「は? こっちは心配してんじゃん。酷くね?」

 腕を振り払われて露骨に機嫌を損ねる少年に注意する。

「その辺にしておけ」

 すると、全員の視線が一斉に自分に注がれた。こちらを睨む少年たちと、大きな瞳を涙で潤ませて、俺の顔を見上げる少女。転んだ拍子にだろうか、白いブラウスが汚れてしまっている。
 俺は彼女を守るように、少年たちの前に立ち塞がった。

「よってたかって女の子を怖がらせて、恥ずかしいとは思わないのか?」

「いや、何言ってんの? この子が勝手に転んで、勝手に拒否ってるだけだって」

「言い訳はいらない。とっとと立ち去れ」

 攻撃的な態度の割には、彼らに争う気はなかったようだ。

「チッ。正義のヒーロー気取りかよ、ダッセェな。しらけた、行こうぜ」

 少年は捨て台詞を残すと、他のふたりを連れて足早にその場を去っていった。
 ため息を吐いてから振り返ると、少女は怖がるように身体をビクつかせる。

「大丈夫か。どこか痛むのか?」

 俺は努めて優しく問い掛けた。ティアードスカートから覗く両脚に傷は見当たらないようだが、捻挫している可能性もある。

「あ、怪我はないです。どこも痛くありません。ただ、怖くて、脚に力が入らなくなっちゃって」

 泣きそうな声で少女は答えた。
 このまま、ひとりにしてはおけない。

「近くに公園があるから、そこのベンチまで連れて行く。少しの間だけ我慢してくれ」

「えっ……きゃっ!」

 俺は軽くて小柄な少女を抱き上げると、近くの公園まで運んだ。
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