エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
「君はファッションが好きなんだな」

 俺の口からも、率直な言葉が滑り出る。その気持ちは、今まで父や葵に対して感じてきた焦りとは違う。ファッションを楽しむ彼女に対する、純粋な憧れだった。

「はい。服は毎日着ますから、自分の気に入った物を選んだ方がいいに決まってます。それに、」

 少女はショッパーの中にある服を見遣る。まるで恋をしているような甘い瞳と、満足そうに弧を描く唇。
 そして、見惚れてしまうほど晴れやかな笑顔をこちらに向けて、彼女は言った。

「綺麗なお洋服は、私の日常をキラキラと輝かせてくれます。まるで素敵な魔法みたいです」

「……」

 俺は何も言えなくなった。
 魔法か。そうだ。そんなシンプルな答えだったんだ。
 俺はいつも自分のことばかりを考えていて、ファッションの使命を忘れていた。

「良い意見を聞かせてもらった。どうもありがとう」

 自分の発言に照れる少女に礼を言い、俺はトートバッグの中を探った。
 長年の疑問を解決してくれたお礼に、さっきのサンプルのリングを渡してみようと思ったのだ。
 あの華やかなリングを目にした彼女は、一体どんな表情を見せてくれるのだろう。
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