エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました

思い出がふたりを結びつけて

 勝どき駅に着き、征士(せいじ)さんの住むマンションを見上げた私は、思わず「うわぁ……」と驚きの声を発した。
 タワーマンションが立ち並ぶエリアの中でも、一際高くて立派なマンション。中に足を踏み入れるのも躊躇(ためら)うような建物だけど……緊張しながらエントランスを抜けた。
 すぐそこにあるカウンター越しに、コンシェルジュと思しき男性が微笑んで会釈してくれる。まるでホテルみたいな、広くて高級感のあるラウンジに圧倒されていると、椅子のひとつに腰掛けていた男性が立ち上がった。

乃愛(のあ)

「あっ、征士さん」

 私服のシャツとチノパンを身に着けた征士さんが、穏やかな笑顔でこちらに近付いてくる。その堂々とした佇まいは、このラウンジによく似合っていた。
 こんな素敵な男性に自分が釣り合わないってことは、私自身がよく分かっている。
 でも私は、ずっとこの人の傍にいたいから。

「迷わないで来れたか?」

 征士さんの優しい声と表情が、どうしようもなく心に沁みる。
 私は泣きたくなるのを我慢して、クスクスと笑ってみせた。

「もう、子ども扱いしないでください。こんな立派なマンション、迷うはずがないじゃないですか」

「子ども扱いしたつもりはないが。乃愛が電話をくれた後、やはり迎えに行くべきだったと後悔してたからな」

 征士さんは私を連れてエレベーターホールへと向かった。オフィスビルみたいに、何基もあるエレベーターの内のひとつに乗り込む。
 私たちを乗せたエレベーターは、どんどん上昇していく。タワーマンションに来るのが初めての私は、その現実感のなさにふわふわとした心地になった。
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