エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
「御堂様を呼んで参りますね」

 係の人がにこやかにお辞儀をしてから、衣装部屋を出て行く。
 征士さん、今の私を見て何て言ってくれるかな? やっぱりプロのモデルさんにすれば良かったって思われたら、どうしよう。
 不安に思っていると、程なくして部屋のドアがノックされる音がした。

「はい」

「藤島さん、問題なく支度出来たか?」

 ドアを開けて姿を現した征士さんに、私の視線は釘付けになった。

「御堂課長も着替えられたんですね。素敵です!」

 シルバーのタキシードを着た征士さんは、当然ながらとてもカッコいい。
 タキシードと同色のネクタイを締め、左胸には白い薔薇の花が挿してある。
 まるで王子様が迎えに来てくれたみたいで、うっとりしちゃうよ。

「……」

 私のウェディングドレス姿を見つめて、黙り込む征士さん。やっぱり似合わなかったかな……?
 と、征士さんの脇から、篠崎さんがひょこっと顔を出した。

「藤島さん、とっても可愛いわ! まるでお人形さんみたいよ。私のドレス選びの目に狂いはなかったわね」

「篠崎さん、その節はありがとうございます」

「ちょっと、征士。愛しの恋人がこんなに綺麗な花嫁姿になったんだから、ちゃんと褒めなさいよ」

 征士さんを肘で軽く小突く篠崎さん。すると征士さんは、頬をうっすらと赤く染めて言った。

「いや……彼女があまりにも美しかったから、言葉が出てこなかった」

「えっ」

 彼の意外な一言に、嬉しさと恥ずかしさで顔が熱くなる。
 そんな私たちを見て、篠崎さんが「あらあら」と楽しそうに笑った。
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