100日後、キミのいない世界で生きていく



「…陽菜乃っ!」


ハッと目を覚ますと、そこは誰もいない電車の中だった。

はあはあと乱れた呼吸を深呼吸をしながら整え、ここが陽菜乃のいない十年後なのだと理解する。


陽菜乃はここ最近ニュースで話題になっていた連続通り魔に五回も包丁で刺されて十年前のあの日、死んでしまった。

陽菜乃は刺されながらも必死に抵抗をしていたようで、被害は良くも悪くも陽菜乃だけだった。

あのあと犯人は呆気なく逮捕され、死刑判決が下された。

だけど、そんなのはどうでもいい。あの犯人が死刑になろうが、陽菜乃が戻ってくることはもう二度とないのだから。


私たちはあの日もう一度始められそうだった。

だけど陽菜乃の死がきっかけで再びバラバラになってしまったのだ。


莉久は初めの頃に戻ったかのように女遊びが激しくなった。高校に行っても、大学に行ってもそれは変わらなかった。

颯太はあんなに人一倍努力してエースまでなったというのに、バスケをやめてしまった。

若菜は中学卒業後、高校にも行かず家に引きこもるようになった。精神科に通ってはいるけど、何も変化は訪れていない。

眞紘は私と別れた後、頭のいい高校と大学に進学し、違ういつメンを作って毎日を楽しそうに過ごしていた。まるで陽菜乃や私たちと過ごした時間を忘れようとしているかのように。
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