向日葵の園
「憂さん、なんで快諾してくれたんですか?」

お姉ちゃん、綴、都が車から荷物を下ろしてくれている。
私はお礼も兼ねて、少し憂さんと話をした。

憂さんと二人で言葉を交わすことは珍しい。

「そりゃヒマワリちゃんからのお願いだからだよ。父さんも二つ返事でオーケーだって」

「お姉ちゃんの妹だから?」

「もちろんそれもあるけど。ほら、ここってヒマワリちゃんの為の場所って感じ、しない?」

憂さんは私のことを「ヒマワリちゃん」って呼ぶ、唯一の人。
お姉ちゃんが初めて憂さんをうちに連れてきた日からそうだった。

元々、植物や生き物が好きで、
大学での研究も、自然と人間が共存していく方法を確立したい、っていうことをテーマにしているみたい。
植物や、生命を維持できなくなってしまった生き物からの、まだ機能している細胞や媒体から抽出した成分で作った薬が、
人間の生命維持に役立てないか…とか。

だからこの前の美術館デートも植物がテーマだったからで、
たまたま見つけた向日葵のポストカードが「私みたいだから」って一目惚れして、
お土産にしてくれたみたい。

ほら、って憂さんが腕を伸ばした先。

どこまでもどこまでも伸びていきそうな、
広大な向日葵畑。

それは畑、って言うよりも
もはや向日葵の園だった。

「う…わぁ…」

「凄いでしょ」

コクコク頷くことしかできない私を、
憂さんは「ふふ」って微笑んだ。
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