向日葵の園
学校に居る時よりも涼しく感じるのに
蝉の大合唱は近くに感じる。
さすが山、って感じ。

なんて、安直なことを考えながら
向日葵の園の、柵の前まで来た。

昨日、ここに着いた時は、まだ門の前から見ていたし、
これだけ近づくと昨日よりも花びらが濃いオレンジ色に見える。

柵の前には相変わらず有刺鉄線が張り巡らされていて、
これ以上近づくことはできない。

…ふ、と思った。

これだけ広大な敷地だから
ひょっとしたらどこかで有刺鉄線も柵も途切れている場所が
一ヶ所くらいあるんじゃないか、って。

山奥だからか、ここに来た時からスマホの電波状況はあまり良くない。
時々繋がる電波の隙を見て、スマホを更新してみても
綴達からの連絡は来ていないし、
まだ戻って来る様子も無かった。

「行ってみよう」

一人で決意を声に出して、
有刺鉄線を辿って、別荘とは反対方向、
向日葵の園の奥へと歩き出した。
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