向日葵の園
「なに…ここ…」

雑多で無機質な空間には
私の囁き声すらよく響く。

別荘の、どの部屋の雰囲気とも違う。
温かみを一切感じない空間。

背後でガチャリとドアが開けられる音がした。

「あれ。目、覚めたんだね」

無地のシンプルな黒いTシャツの上に
白の白衣を羽織った憂さん。

科学者、いや。

マッドハッターそのものみたいな嫌な笑顔を張り付けて
一歩ずつゆっくりと私に近づいてくる。

「なんなんですかここは!なんでこんなこと…」

「案外元気なんだね。もっとグッタリしてるかと思ったよ」

「…私に何を打ったんですか」

「安心して。ただの睡眠薬入りの鎮静剤だよ。暴れられたら困るからね」

「都に打ったのは!?」

「あれはもっとただの痛み止め。よく効くように改良は加えてるけど害なんか無いよ」

「そう…ですか…」

「ヒマワリちゃんは本当に都くんのことが好きなんだねぇ。自分だって得体の知れないモノ打たれてんのに彼の心配ばっかりだ」

「なんでこんなことするんですか」

「こんなことって?」

「全部です!ここに来てからずっと!」

「うーん。全部かぁ。話さなきゃいけないことが多すぎるな。分かった。じゃあ一つずつ丁寧に話してあげるね。ヒマワリちゃんにだけ、特別だからね?」
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