Simple-Lover



陽菜と俺は、それこそ…陽菜が生まれた頃から一緒だった。
隣同士の家で、親同士が意気投合。
よく、お互いの家を行き来していたから、赤ちゃんの頃から陽菜と一緒にいることが多かった。


「裕紀君が居るとずっとご機嫌なのよね、陽菜。」


陽菜の両親によくそう言われてた。
それは、お世辞でもなんでもなくて。

俺の中で2歳の時の記憶なんて曖昧だけど、陽菜はいくら泣きべそでも、俺が側にいくと、泣き止んで…成長するにつれて、嬉しそうに笑うようになって、俺の後を追っかけるようになった。

俺は俺で、初めてそういう、「純真無垢に自分を好き」ってものに出会ったわけで。
単純に嬉しかったんだろうね。
陽菜が笑うと、嬉しくて、おもちゃあげたり、撫でたり…ってことから始まって、友達と遊ぶのとはまた違う感覚で、一緒にいることが楽しみになっていく。

陽菜が成長して、公園や遊園地に行く時も、「ヒロにいと手を繋ぎたい」と駄々をこねる陽菜にまんざらでもなくて「俺が面倒見てやんないと」なんて、いっちょまえに思うようになって行って。
小学校に入ってからも変わらないかな…昼間は友達と遊んでても、夜になると一緒に飯食ったりってことも多くて、陽菜の両親のことも好きだったから、暇になると陽菜の家に行って歓迎されて…陽菜は目を輝かせて「ヒロにい!」って走ってくるし。

嫌なことがあっても、陽菜に会うと気持ちが軽くなって…成長するにつれて、会いたいって思うことが増えていった。

…陽菜に恋愛感情抱いたのがいつ頃かなんて、そんなの改めて自覚するまでもない。
だって、陽菜は俺にとっては、ずっと可愛いままだし、その想いは変わらない。
けど…まあ、10代の2歳は大きいわけで。
俺のが、先に中学生になって、高校生になって…って大人になってく。
当然人間関係が広がっていって、色恋沙汰にも足を突っ込んで行く環境になるわけで。

そりゃ、俺だって普通の男子なんで。
いわゆる思春期の見栄とか考え方とか、色々持つし、そもそも、2歳下の小学生だの中学生だのが好きって周りに知られたらやばいよねなんて、考えとか、色んな変な思考が相まって、他の子と付き合ってみたりもしたし…それに伴う色々もあったけど。

まあ…続かないよね。当たり前だけど。
だって、根底で求めてるのはヒナなんだから。

もちろん、付き合っている間は、ちゃんと相手を大事にするし自分なりに頑張ってるつもりだったけど。
結局そう言うのって、相手に伝わる。


「ヒロって、私のこと好きじゃないよね」なんて感じに言われて終わり。


長年一緒に居た心地良さを手放せなくて、彼女が居ても、結局週末にはヒナに会いに行ってたんだから、そりゃそうかって今は思うけど。

まあ…もう待つしかないよな、口説いて良い歳まで。
高校卒業した後なら、大人だし自由でしょ。

なんて…思っていた矢先。


「ヒロにい、見て!可愛い?!」


ニッコニコ顔で現れたと思ったら、『いかにも』って感じのミニ丈のワンピースで登場。


「今度、高校の友達とか皆で出かけるの!」


いや…待ってよ。
俺が散々我慢して、待ってんのに違う男に口説かれに行くわけ?

なんて思ったら、高校卒業なんてすっ飛ばして、理性も吹っ飛んだ。

勝手に待ってたくせに、その矛先をヒナに向けて…「お前が好きなのは俺だろうが」なんて、身勝手極まりない独占欲。
自分でも、呆れるほど自分が歪んでんなーって思った。

でも…ね。

俺の腕の中で戸惑いなく、俺を抱きしめ返すヒナにこれでもかってくらい満たされて、もう我慢は無理だなって悟った。


ここから先は…今まで以上に大切にする。絶対。
陽菜が俺と居てくれる未来が続くように……。



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