ラスボスの夫に殺される悪役令嬢として転生したので、生き残ってみせる!と意気込んでいたらなぜか夫がデレ始めて戸惑っています
(お茶をわざとこぼされた時、酷いと思った。でも、最初に酷いことをしていたのは私の方。自分の行いが自分に返ってきていただけだった)

 胸が苦しい。クロークだけじゃない、今まで出会ってきた多くの人たちに、失礼で酷いことを平気でしてきた。
どうして自分はそこまで酷いことを平気でできたんだろうか。自分のことなのに信じられないほど胸が痛くてたまらないが、そう思ったところで、言動は撤回出来るものではない。キャロラインは悲痛な面持ちで料理を見つめる。

「いや、今の君からの謝罪は受け取っておこう。俺も、酷い対応をした。すまなかった」

 クロークの言葉にキャロラインが思わず顔を上げると、クロークのオッドアイと目が合う。あのクロークが、自分に謝罪をしてくれた。やっぱり、小説の中のようにクロークは良いところもあるのだ。宝石のようにキラキラと輝く琥珀色と翡翠色のオッドアイが、キャロラインを射抜いていた。その宝石のような輝きに思わずキャロラインは息を呑む。

「綺麗……!」
「は?」

 クロークが眉を顰めて疑問を口にすると、キャロラインはしまった!と言わんばかりの顔になり両手で口元を覆う。

「いえ、あの、申し訳ありません。クローク様の瞳が宝石のようであまりに綺麗だったので」
「綺麗?俺の瞳が?」
「はい、とてもお美しいです!」

 見るからに裏表がないという表情でキャロラインは笑顔で言う。その屈託のない表情にクロークはさらに顔を顰めた。レオは主を誉められた嬉しさのあまり笑みが溢れてしまいそうになるが、溢れないように必死で耐えている。

「呪われた瞳が美しいわけないだろう」
「いえ、でも本当に美しいと思ったので。思うのは、私の自由ですよね?」

 クロークの言葉に首を傾げてそう言うキャロラインを見て、クロークは目を細めてから静かにため息をつく。

「勝手にすればいい。ほら、料理が冷めてしまうぞ」
「あ、はい!」

 そうして、キャロラインとクロークはまた料理を食べ始めた。

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