ラスボスの夫に殺される悪役令嬢として転生したので、生き残ってみせる!と意気込んでいたらなぜか夫がデレ始めて戸惑っています
◆
その日の夜。キャロラインがコンコン、と執務室のドアをノックすると、ああ、とすぐにクロークの返事が聞こえる。
「キャロラインです」
「どうぞ」
「失礼します」
静かにキャロラインが執務室へ入ると、自席に座って仕事をしていたクロークは机の上に積み重ねられた書類に目を通しながら、チラ、とキャロラインへ視線を向ける。
(帰ってきてからもまだお仕事をなさってるのね、大変だわ)
「そこのソファに座ってくれ」
「わかりました」
促されるまま、キャロラインはソファに座る。クロークの執務室に入るのは初めてで、キャロラインは少しワクワクしてしまう。キョロキョロと辺りを見渡していると、自席からクロークが立ち上がり、キャロラインの向かいのソファに座った。
「お話というのはなんでしょうか」
緊張しながらもクロークの顔をしっかりと見つめてキャロラインが尋ねると、クロークはキャロラインを真顔で見つめたままだ。どちらも、視線をそらすことなくジッと見つめ合う。どのくらいそうしていただろう、ようやく、クロークが口を開いた。
「……ユキというのは一体誰のことだ」
クロークの言葉に、キャロラインは両目を見開く。膝の上に置いていた両手は震え、まるで全身の血の気がひいていくようだ。
「どうして……」
そう言ってから、キャロラインはハッとする。
「まさか、読んだのですか?人の日記を!?」
「それについては謝る。だが、たまたま机の上に開かれたままで、君が以前慌てて隠そうとしたものに似ていたから気になった。もしかすると君が別人のようになってしまった原因に繋がる何かなのではないかと思っていたのだが……」
そう言って、目を細めてキャロラインをジッと見据える。
「この世界が小説の中の世界で、俺が君を惨殺し、俺は兄に殺される。あれにはそう書いてあった。だが、意味がわからない。一体どういうことか教えてほしい」
「そ、それは……」
キャロラインは動揺して視線を泳がせる。日記を読まれてしまったのであれば、もうどうしたってごまかすことはできない。頭を打った衝撃でおかしくなったせいです、と一時的に言い逃れたところで、いつかはバレてしまうだろう。キャロラインはぎゅっと目を瞑ってから大きく深呼吸して、顔を上げる。クロークの美しいオッドアイと視線が重なった。
「……わかりました。信じてもらえるかどうかはわかりませんが、クローク様には本当のことをお話しします」
その日の夜。キャロラインがコンコン、と執務室のドアをノックすると、ああ、とすぐにクロークの返事が聞こえる。
「キャロラインです」
「どうぞ」
「失礼します」
静かにキャロラインが執務室へ入ると、自席に座って仕事をしていたクロークは机の上に積み重ねられた書類に目を通しながら、チラ、とキャロラインへ視線を向ける。
(帰ってきてからもまだお仕事をなさってるのね、大変だわ)
「そこのソファに座ってくれ」
「わかりました」
促されるまま、キャロラインはソファに座る。クロークの執務室に入るのは初めてで、キャロラインは少しワクワクしてしまう。キョロキョロと辺りを見渡していると、自席からクロークが立ち上がり、キャロラインの向かいのソファに座った。
「お話というのはなんでしょうか」
緊張しながらもクロークの顔をしっかりと見つめてキャロラインが尋ねると、クロークはキャロラインを真顔で見つめたままだ。どちらも、視線をそらすことなくジッと見つめ合う。どのくらいそうしていただろう、ようやく、クロークが口を開いた。
「……ユキというのは一体誰のことだ」
クロークの言葉に、キャロラインは両目を見開く。膝の上に置いていた両手は震え、まるで全身の血の気がひいていくようだ。
「どうして……」
そう言ってから、キャロラインはハッとする。
「まさか、読んだのですか?人の日記を!?」
「それについては謝る。だが、たまたま机の上に開かれたままで、君が以前慌てて隠そうとしたものに似ていたから気になった。もしかすると君が別人のようになってしまった原因に繋がる何かなのではないかと思っていたのだが……」
そう言って、目を細めてキャロラインをジッと見据える。
「この世界が小説の中の世界で、俺が君を惨殺し、俺は兄に殺される。あれにはそう書いてあった。だが、意味がわからない。一体どういうことか教えてほしい」
「そ、それは……」
キャロラインは動揺して視線を泳がせる。日記を読まれてしまったのであれば、もうどうしたってごまかすことはできない。頭を打った衝撃でおかしくなったせいです、と一時的に言い逃れたところで、いつかはバレてしまうだろう。キャロラインはぎゅっと目を瞑ってから大きく深呼吸して、顔を上げる。クロークの美しいオッドアイと視線が重なった。
「……わかりました。信じてもらえるかどうかはわかりませんが、クローク様には本当のことをお話しします」