ラスボスの夫に殺される悪役令嬢として転生したので、生き残ってみせる!と意気込んでいたらなぜか夫がデレ始めて戸惑っています
「そ、それは、そうだったかもしれませんが……で、でも、とにかく恥ずかしいと言いますかなんと言いますか」

 いたたまれず目を逸らし、掴まれた手首を振り解こうとしたが、クロークは手首を掴んだままだ。

「……恥ずかしい?君がか?」

 そう言うクロークの顔は明らかに意味がわからないと言うような顔をしている。

「演技をして誤魔化そうとしているのかもしれないが、俺には通用しない。使用人たちを騙せても、俺やレオは騙せないと思うんだな」

 そう言って、クロークはキャロラインの手首を静かに離し、部屋を出ていった。

(うう、信じてもらえなかった。それはそうだよね、急すぎるもの)

 信じてもらうにしても、クロークとはまだ接点がなさすぎる。どう攻略すればいいのか検討もつかない。クロークに掴まれた手首は気づくと赤くなり痕がついていた。キャロラインは恥ずかしさのあまり痛みすらわからなかったが、クロークもおそらく無意識に掴む力が強まっていたのだろう。今になって少し痛くなってきた。
 
(クローク様に殺されないなんて、できるのかな……)

 一抹の不安がキャロラインの心をよぎる。だが、こんなことでめげていてはそれこそ死亡フラグは回避できない。

(だめだめ、弱気になんてなってる場合じゃないわ。まだ始まったばかりなのよ)

 ドキドキする胸を紛らわせるように首をブンブンと振って、キャロラインはしっかりと目の前を見つめてこれからの方針をまた練りだした。
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