心の声を聞きたい王子様に応える私は変態ですか?

2.ヒロイン視点

 私の受け答えはどうなんだろう。

 嘘をつかないように話してはいるけど――って、こんなふうに悩んでいることも筒抜けなのよね。

 でも、大丈夫。誰だってそうなるはず。心を読まれていると知らされれば誰だって悩む。たぶん私の考えていることは普通のはず!
 
「それでは、次の質問にまいります」
「はい!」

 怖い。どんな質問がくるのだろう。

「夜の性生活はどのように考えられていますか」

 せ、せいせいかつ……?
 それってアレ?
 夜のソレ?

 えええええー!?

「セルバンティス様は王子。世継ぎが必要ですから重要事項です。私もいますから、お答えにならなくてよろしいですよ」

 頭の中で考えて答えろってことなの! しゃべっていれば文章を整えようとする方向に頭も働く。でも、想像するだけだとどうしても……!

 寮生活の私に不便がないように、週に一度使用人のセシルがご用聞きに来てくれる。セルバンティス様とお会いした時の付き人も彼女だ。セシルは最近「お嬢様もそろそろ年頃なので」と色んなことを教えてくれるし、本まで持ってきてくれる。

 性生活をどう考えてるかって……何を私は聞かれているの? 頻度? えっと、それは毎日とか一日おきとか? ああ、頭の中がピンクになっていく! セシルのせいで「体位・四十八手」の本に載っていたイラストまで鮮明に頭に! しかも目の前にセルバンティス様がいらっしゃるせいで、リアル画像に変換される……!

 こぼれ松葉。
 浜千鳥。
 菊一文字。
 
 セシルに教えられた四十八手の歌までが頭の中を流れていく。

 私、大丈夫!?
 エロすぎて振られない!?
 なんてことを教えるの、セシルのバカー!

 駄目だ。黙っているとそっちの想像が膨らむばかり。建前と本音が違っていても、しゃべるしかない。

「あ、あの、お世継ぎは大事ですよね。えっと、が、頑張ります!」

 四十八手を!? ああ、自分の言葉に変な突っ込みをしてしまう!

「ありがとう、ユリア嬢。世継ぎの必要性を理解してくれているようで、ほっとしたよ」

 え、セルバンティス様が歩いてこちらに来て、私の手を握ってくれた!?

 どうしよう。これまでの会話から、この逞しい手であんなことやこんなことやとかもうすごい妄想が始まっているけど!

「君のことが、私も好きだ」
「セルバンティス様……!」

 こんな妄想をする令嬢でもいいんですね?

 やさしく微笑んでくれているから、きっといいのだろう。彼は人の心を読みたくなるくらいに不安なんだ。もう開き直ろう。好きだという気持ちが伝わるならそれでいい。

 私、私……! 毎日でもピーしたりピーをピーしてピーすることも躊躇いません! もちろんピーすることもやぶさかではありませんよ! 当然ながら、ピーすらも――、

 頭の中に色々とピーピー飛んでいるけれど、それで安心してもらえるのなら……!

 私と彼が手を取り合い見つめ合う中、彼の執事がとんでもない質問をした。

「これも答えなくてはいいですが……お世継ぎのため、円滑な性生活のためにお聞きします。自分でされることはありますか?」
「え……」

 初めて私はこの場から逃げたくなった。 
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