心の声を聞きたい王子様に応える私は変態ですか?

3.執事視点

「執事ぃ、お前が一番狂っているわよねぇ」

 夢魔が笑う。

「私はあの二人を愛しているだけですよ。私の言葉で頬を赤くしたり目を潤ませたり、あらぬ想像をしてしまうユリア様も愛していますし、全てを知りたいと望むセルバンティス様も愛しています」
「お前、これからたびたび私と契約するでしょぉ。あの娘の心を王子にわざわざ読ませるなんて悪趣味なことを繰り返すのよねぇ?」

 夢魔は人間の心を読む。
 どうでもいいことですけどね。
 
「悪趣味だなんて。夢魔のくせにおかしなことを言いますね」
「お前、やりすぎると早く死ぬよぉ?」
「後任を早急に育てなければなりませんね」

 ああ、ユリア様はなんて可愛らしいのでしょうね。泣きそうになって言葉も出せずセルバンティス様の手を縋り付くように握って、まるでこれから夜伽でも始まるようだ。

 ――手に入る娘などつまらない。いい女というものは、手に入らないからいい女なのですよ。

「お前、気に入ったわぁ」
「寿命をこれからたくさん食べられそうだからでしょう」
「くふふっ、これからいいものを見せてもらえそうねぇ」

 セルバンティス様なら、夜伽の間もきっと心の声を聞きたいでしょう。王子としての責任から、さすがにもう自分の寿命は使わない。そこまで愚かな人ではない。

 ――ですから、私を使ってくださいね?

 夢魔の力はその場にいなければ発揮されない。ユリア様をどう説得されるのかも楽しみです。

「あいつもいい趣味してるわねぇ」
「どういう意味ですか」
「今日聞いた心の声を利用するつもりよぉ。あの時、こう望んでいただろうって。んふふっ。結婚後が楽しみねぇ」

 心の声、愛の証明のために覗きたい人もいれば覗かれたい人もいる。

 でも――、見えないからこそ楽しいのだと、私は思いますけどね。

 自分の色に染めて染められ、どんな色に変わっていくのか。

 私はきっと短命でしょう。それでも、私の命と愛で彩りを変化させる彼らを見られるのならそれでいい。

 ――さて、次はどんな質問をしましょうか。

 いい顔、見せてくださいね?
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