心の声を聞きたい王子様に応える私は変態ですか?
4.結婚後
「君のことがどうしても欲しくて、今日まで嘘をついていたことがあるんだ。本当にすまない」
結婚式は無事執り行われた。
王子様との結婚には両親も大喜び。社交でも私は、彼と婚約した時から大人気だ。
『ねぇ、あの話は本当だったの? ほら、あれよ。心を……って』
『例の砂糖菓子、セルバンティス様はたくさん持っている様子だったのかしら』
『ねぇ、彼の前でどんなことを考えたの?』
それはもう、ご令嬢たちは興味津々だ。答えられない質問は多いけど、知り合いが増えたのは純粋に嬉しい。その分、人間関係で苦労する点はあるものの、ぼっちは寂しいものだ。
そしてこれから初夜が……という今。彼は寝衣、私もまたネグリジェ。さぁ何かが始まるぞという時に、セルバンティス様が辛そうなお顔を私に向けた。
今はベッドの上に腰掛けている。
本当にまさに今から……だ。このタイミングで「嘘をついていたことがある」と言われたなら、おそらく私の予想は的中しているはず。
彼はあの時にこう言った。
『ずっと周囲の顔色ばかりうかがってきたんだ。それを悟られないように虚勢ばかり張っていた。どうしても本当に好かれているのか、たった一度きりでいいから試したいと思ってしまった』
――と。
さすがに交流を重ね、彼がそんなに弱い人間ではないことも知っている。
彼が嘘をついていたこと、それは「一度きりでいいから」とは思っていなかったということだろう。きっと何度も心を読みたいと思っていたに違いない。
このあとの夜伽の間も――と。
緊張で手に汗がじわっと滲むのが分かる。そんなのは無視して覚悟を決めて、彼に笑顔を向けた。
「はい。なんでも言ってください。私は妻ですよ」
私は王子様の妻。彼のお仕事の出来次第で国が衰退するかもしれない。彼の精神的サポートは私の役目だ。
――夜伽の間に心を読まれることくらい、どんとこいよ!
それが国の今後のますますの平和につながるかもしれないのだ。彼のプライベートな望みくらい、妻ならば叶えないと!
「実は、心を読めると言ったあの砂糖菓子は嘘なんだ」
「……え?」
そ、そこ!?
「本当は夢魔と契約した。三年間の寿命を犠牲にして三時間だけ君の心を読んだんだ。他の令嬢にはすぐに帰ってもらった。私は君だけを愛していて、どうしても気持ちを確かめたかった」
そんな……三年も。
彼が先に旅立ったらどうしてくれるのだろう。きっと、心さえ読まなければもっと側にいられたのにと責めてしまう。……責める相手すらいないのに。
「それなら、もう読まないでください。私はできるだけ長い間、セルバンティス様と一緒にいたいです」
涙声になってしまったかもしれない。
寿命を犠牲にしてまで私の心を確かめたいと思ってもらえていたのは純粋に嬉しい。でも――。
「ああ、さすがにもう自分の寿命は犠牲にしない」
「絶対ですよ!」
「ああ。絶対に自分の寿命は使わない」
自分の寿命は……?
なんか、そこ強調してない?
ま、まさか……。
結婚式は無事執り行われた。
王子様との結婚には両親も大喜び。社交でも私は、彼と婚約した時から大人気だ。
『ねぇ、あの話は本当だったの? ほら、あれよ。心を……って』
『例の砂糖菓子、セルバンティス様はたくさん持っている様子だったのかしら』
『ねぇ、彼の前でどんなことを考えたの?』
それはもう、ご令嬢たちは興味津々だ。答えられない質問は多いけど、知り合いが増えたのは純粋に嬉しい。その分、人間関係で苦労する点はあるものの、ぼっちは寂しいものだ。
そしてこれから初夜が……という今。彼は寝衣、私もまたネグリジェ。さぁ何かが始まるぞという時に、セルバンティス様が辛そうなお顔を私に向けた。
今はベッドの上に腰掛けている。
本当にまさに今から……だ。このタイミングで「嘘をついていたことがある」と言われたなら、おそらく私の予想は的中しているはず。
彼はあの時にこう言った。
『ずっと周囲の顔色ばかりうかがってきたんだ。それを悟られないように虚勢ばかり張っていた。どうしても本当に好かれているのか、たった一度きりでいいから試したいと思ってしまった』
――と。
さすがに交流を重ね、彼がそんなに弱い人間ではないことも知っている。
彼が嘘をついていたこと、それは「一度きりでいいから」とは思っていなかったということだろう。きっと何度も心を読みたいと思っていたに違いない。
このあとの夜伽の間も――と。
緊張で手に汗がじわっと滲むのが分かる。そんなのは無視して覚悟を決めて、彼に笑顔を向けた。
「はい。なんでも言ってください。私は妻ですよ」
私は王子様の妻。彼のお仕事の出来次第で国が衰退するかもしれない。彼の精神的サポートは私の役目だ。
――夜伽の間に心を読まれることくらい、どんとこいよ!
それが国の今後のますますの平和につながるかもしれないのだ。彼のプライベートな望みくらい、妻ならば叶えないと!
「実は、心を読めると言ったあの砂糖菓子は嘘なんだ」
「……え?」
そ、そこ!?
「本当は夢魔と契約した。三年間の寿命を犠牲にして三時間だけ君の心を読んだんだ。他の令嬢にはすぐに帰ってもらった。私は君だけを愛していて、どうしても気持ちを確かめたかった」
そんな……三年も。
彼が先に旅立ったらどうしてくれるのだろう。きっと、心さえ読まなければもっと側にいられたのにと責めてしまう。……責める相手すらいないのに。
「それなら、もう読まないでください。私はできるだけ長い間、セルバンティス様と一緒にいたいです」
涙声になってしまったかもしれない。
寿命を犠牲にしてまで私の心を確かめたいと思ってもらえていたのは純粋に嬉しい。でも――。
「ああ、さすがにもう自分の寿命は犠牲にしない」
「絶対ですよ!」
「ああ。絶対に自分の寿命は使わない」
自分の寿命は……?
なんか、そこ強調してない?
ま、まさか……。