俺の彼女は高校教師
第3章 夢の途中で
「ねえねえ弘明君 キスしてよ。」 香澄のでっかい顔が俺に迫ってくる。
逃げても逃げても追い掛けてくる。 そして断崖絶壁にまでやってきた。
「さあさあどうするの? キスするの? しないの? どっち?」 「どっちでもねえよ!」
香澄を振り払ったところで目が覚めた。 「何だ、夢か。」
それにしてもおっかない夢だ。 香澄の顔が風船になって追い掛けてくるなんて、、、。
そこへ、、、。 「弘明、何騒いでるのよ?」
「え?」 「ワートカやめろーとか騒いでたでしょ?」
「そんなに?」 「香澄ちゃんの夢でも見たんじゃないのかなあ?」
「そうかもしれねえ。」 「いい加減に香澄ちゃんを捕まえなさい。 ほったらかしたらあんた 一生後悔するかもよ。」
「捕まえたほうが後悔するわ。」 「あっそう。 じゃあ知らないわ。」
バタンとドアを閉めて姉ちゃんは行ってしまった。
(おかしいんだよなあ。 香澄の母ちゃんは夜飯に誘ってくれるし父さんもご機嫌だし、香澄はああだし、、、。)
どうも夕食を一緒に食べて以来、香澄の表情が変わってきてるんだ。 いやいやまいったぞ。
次の日もいつも通りに駅へやってきた。 「おっはよう! 弘明くーーーーん。」
「きもっ。」 「何ですって? もう一度言ってごらんなさい。」
「だからきもいんだって。」 「私がきもいって? 彼女なのにきもいって言った輪よね? ああ、こらーーーーー!」
「またやってるわ。 飽きないんだからなあ。」 「いいのよ あれで。」
「まあそうだけどさあ、道の真ん中で彼女だのきもいだのってやられたら見てられないわよ。」 「それもそうね。」
寮組の連中もどっか冷めた目で俺たちを見ているらしい。 俺と香澄は今日も追いかけっこをしている。
昇降口を入り、階段を駆け上がり、廊下を疾走する。 1年生も何事か?っていう目で俺たちを見送っている。
教室に入ろうとした時、久保山先生がやってきた。 「お前たちは元気がいいなあ。」
先生が振り向いたところに香澄が正面衝突したものだから大変。 出席簿を持ったまま先生はひっくり返ってしまった。
「ワーーーー、ごめんなさーーい。」 「元気良過ぎ。」
「香澄ちゃん 何やってんのよ?」 「教室に入ろうとしたら先生が居たから、、、。」
佐藤たちもその現場を見て大笑いしている。 「久保山先生も災難だなあ。 あんなブスに突進されて、、、。」
「ブスって何よ? ブスって?」 「ほらほらいいから席に着け。」
やっと立ち上がった久保山先生も教室に入ってきた。 「廊下を走っちゃいかんとあれだけ注意しただろう? まだ分からんのか?」
「だって弘明君が、、、。」 「だってもくそも無い。 校舎中の手洗い場を掃除しろ。 いいか。」
「そんな、、、。」 「文句が有ったら吉田と話し合うんだな。」 先生は香澄を睨みつけた。
「こわ、、、。」 「お前だって他人事じゃないだろう。 なあ、佐藤?」
「いやいや、でも俺は、、、。」 「叱られたくなかったら黙っとくんだな。」
今日の久保山先生はどっか機嫌が悪い。 振り向きざまに香澄に押し倒されたんだから余程に悔しかったんだろうなあ。
休み時間になるたびに香澄は俺に迫ってくる。 「ねえねえ、一緒に掃除しようよ。」
「何でだよ?」 「あたしたち同罪なのよ。」 「何が?」
「元はと言えば弘明君が怒らせるから悪いんだからね。」 「またそれか。」
「または無いでしょう? または?」 「お二人さん 仲いいねえ。 結婚したら?」
「そうだそうだ。」 「もう18なんだしさあ、結婚しちゃえよ。」
そうやって囃してくるやつも居る。 厄介だなあ。
昼休みになりまして、いつものように弁当を掻き込んで図書館へ、、、。 (ちっとはゆっくりしたいもんだな。)
奥のテーブルで本を読んでいると美和が入ってきた。 (何をしてるんだろう?)
本を読みながらチラッチラッと美和を見る。 俺には気付いてないらしい。
そこへ香澄が入ってきた。 (あいつまで来たよ。 どうなってんだい?)
「あら、香澄ちゃんも来たの?」 「読みたい本が有ったもんだから、、、。」
「そっか。 私も本を探してたのよ。」 そこから二人はお喋りを始めた。
(あいつら、俺には気付かない振りをしてるな。) 何だか少しは寂しい気持ちになってきたぞ。
本を棚に戻して帰ろうとした時だった。 「弘明君ってさあ、先生のことが好きなのよね?」
「え? そうなの?」 「うん。 私のことなんてこれっぽっちも考えてくれないの。」
「それはダメねえ。 香澄ちゃんとは小学校から一緒だったんでしょう?」 「そうなんですよ。 だからもうちっと考えてほしいんだけど、、、。」
二人が俺のことで話し合ってるのを聞いてしまった。 (こりゃ大変だ。)
図書館を出た所で2年の森崎裕翔が話しかけてきた。 「吉田さん 浦川さんって何処に居るか知ってます?」
「浦川? ああ、香澄か。 中に居るよ。」 「ああ、ありがとうございまーす。」
それから教室に戻ってきたんだけど何だか気持ちが落ち着かない。 5時間目は社会だ。
「ごめん。 体調が悪くなったから帰るわ。」 佐藤にそう伝えて教室を出る。
まだまだ香澄は図書館に居るみたい。 (今のうちに消えちまおう。)
そう思って俺は昇降口を出た。 駅前通りを歩いてみる。
真昼間の駅前は少し騒がしいくらいか。 電車が走っているのが見える。
ホームに来ると珍しく椅子に座った。 暖かい昼下がりだ。
もちろん、乗客が居るわけでもなく駅はガランとしている。 貨物列車がやってきた。
飛び込みたい気分だぜ。 どうしてくれるんだよ?
そんな時にスマホが鳴った。 「誰だよ?」
電話を掛けてきたのは香澄だった。 「何であいつが?」
「弘明君 大丈夫なの?」 「何が?」
「体調悪くて早退したって、、、。」 「ちょいとな、風邪ひいたみたいなんだよ。」
「本当に大丈夫なの?」 「心配か?」
「うん。 今何処なの?」 「これから電車に乗る所だよ。」
「まだ乗らないで。 すぐに行くから。」 「いいよ。 これから病院にも行くし、、、。」
「ダメ。 私が行くまで待ってて。」 そう言うと香澄はスマホを切った。
どうしようもねえやつだなあ。 これじゃあ仮病だってのがばれちまうじゃねえか。
だからって逃げるとあいつはまたまた泣きながら電話してくる。 「死んでやるーーーー。」なんて言い出すんだろうなあ。
電話してきてから30分ほど、、、。 2本の電車を見送ったところで香澄と律子がホームに飛び込んできた。
「何だい? 律子まで来たのか?」 「一緒に来てって言うもんだからさあ、、、。」
「弘明君 ほんとに大丈夫なの?」 「まだ分かんねえよ。」
「病気だったらどうしよう?」 「病院に行けば治るよ。」
「私なのよね?」 「何が?」
「私が弘明君を悩ませてるのよね?」 「そんなことは、、、。」
「はっきり言っていいのよ。 彼女なんだから。」 「まだ彼女って決まったわけじゃないだろう?」
「私は本気なの。 本気で心配してるの。」 「誰かのドラマみたいね。」
律子は香澄を見ながら呆れ顔である。 「どうなのよ?」
「どうって?」 「本当に体調悪いの?」
「悪いから帰るんだろうがよ。」 「ああ、また私を困らせる気ね?」
「だからやめなって。」 「やめないわよ。 彼女なんだから。」
「ほらほら電車が来たぞ。」 「ああ、逃げるなーーーー! こらーーー!」
またまたいつもの追いかけっこが始まった。 律子は知らない間に二人から離れていた。
電車に乗っても香澄は俺から離れない。 「うちに来てよ。」
「何でだよ?」 「看病してあげる。」
「お前がか?」 「だって心配なんだもん。」 「お前んちに行ったら母さんたちまで心配するだろうがよ。」
「じゃあ私が行くわ。」 「いいよいいよ。 治ったから。」
「嘘だったのね?」 「嘘じゃねえってば。」
「じゃあ、傍に居てもいいでしょう?」 「しゃあねえなあ。」
ってなわけで二人で駅を出たのであーーーる。 何年ぶりだろうなあ?
香澄が俺の家に来るのは、、、。 正直、うるさいんだけど。
逃げても逃げても追い掛けてくる。 そして断崖絶壁にまでやってきた。
「さあさあどうするの? キスするの? しないの? どっち?」 「どっちでもねえよ!」
香澄を振り払ったところで目が覚めた。 「何だ、夢か。」
それにしてもおっかない夢だ。 香澄の顔が風船になって追い掛けてくるなんて、、、。
そこへ、、、。 「弘明、何騒いでるのよ?」
「え?」 「ワートカやめろーとか騒いでたでしょ?」
「そんなに?」 「香澄ちゃんの夢でも見たんじゃないのかなあ?」
「そうかもしれねえ。」 「いい加減に香澄ちゃんを捕まえなさい。 ほったらかしたらあんた 一生後悔するかもよ。」
「捕まえたほうが後悔するわ。」 「あっそう。 じゃあ知らないわ。」
バタンとドアを閉めて姉ちゃんは行ってしまった。
(おかしいんだよなあ。 香澄の母ちゃんは夜飯に誘ってくれるし父さんもご機嫌だし、香澄はああだし、、、。)
どうも夕食を一緒に食べて以来、香澄の表情が変わってきてるんだ。 いやいやまいったぞ。
次の日もいつも通りに駅へやってきた。 「おっはよう! 弘明くーーーーん。」
「きもっ。」 「何ですって? もう一度言ってごらんなさい。」
「だからきもいんだって。」 「私がきもいって? 彼女なのにきもいって言った輪よね? ああ、こらーーーーー!」
「またやってるわ。 飽きないんだからなあ。」 「いいのよ あれで。」
「まあそうだけどさあ、道の真ん中で彼女だのきもいだのってやられたら見てられないわよ。」 「それもそうね。」
寮組の連中もどっか冷めた目で俺たちを見ているらしい。 俺と香澄は今日も追いかけっこをしている。
昇降口を入り、階段を駆け上がり、廊下を疾走する。 1年生も何事か?っていう目で俺たちを見送っている。
教室に入ろうとした時、久保山先生がやってきた。 「お前たちは元気がいいなあ。」
先生が振り向いたところに香澄が正面衝突したものだから大変。 出席簿を持ったまま先生はひっくり返ってしまった。
「ワーーーー、ごめんなさーーい。」 「元気良過ぎ。」
「香澄ちゃん 何やってんのよ?」 「教室に入ろうとしたら先生が居たから、、、。」
佐藤たちもその現場を見て大笑いしている。 「久保山先生も災難だなあ。 あんなブスに突進されて、、、。」
「ブスって何よ? ブスって?」 「ほらほらいいから席に着け。」
やっと立ち上がった久保山先生も教室に入ってきた。 「廊下を走っちゃいかんとあれだけ注意しただろう? まだ分からんのか?」
「だって弘明君が、、、。」 「だってもくそも無い。 校舎中の手洗い場を掃除しろ。 いいか。」
「そんな、、、。」 「文句が有ったら吉田と話し合うんだな。」 先生は香澄を睨みつけた。
「こわ、、、。」 「お前だって他人事じゃないだろう。 なあ、佐藤?」
「いやいや、でも俺は、、、。」 「叱られたくなかったら黙っとくんだな。」
今日の久保山先生はどっか機嫌が悪い。 振り向きざまに香澄に押し倒されたんだから余程に悔しかったんだろうなあ。
休み時間になるたびに香澄は俺に迫ってくる。 「ねえねえ、一緒に掃除しようよ。」
「何でだよ?」 「あたしたち同罪なのよ。」 「何が?」
「元はと言えば弘明君が怒らせるから悪いんだからね。」 「またそれか。」
「または無いでしょう? または?」 「お二人さん 仲いいねえ。 結婚したら?」
「そうだそうだ。」 「もう18なんだしさあ、結婚しちゃえよ。」
そうやって囃してくるやつも居る。 厄介だなあ。
昼休みになりまして、いつものように弁当を掻き込んで図書館へ、、、。 (ちっとはゆっくりしたいもんだな。)
奥のテーブルで本を読んでいると美和が入ってきた。 (何をしてるんだろう?)
本を読みながらチラッチラッと美和を見る。 俺には気付いてないらしい。
そこへ香澄が入ってきた。 (あいつまで来たよ。 どうなってんだい?)
「あら、香澄ちゃんも来たの?」 「読みたい本が有ったもんだから、、、。」
「そっか。 私も本を探してたのよ。」 そこから二人はお喋りを始めた。
(あいつら、俺には気付かない振りをしてるな。) 何だか少しは寂しい気持ちになってきたぞ。
本を棚に戻して帰ろうとした時だった。 「弘明君ってさあ、先生のことが好きなのよね?」
「え? そうなの?」 「うん。 私のことなんてこれっぽっちも考えてくれないの。」
「それはダメねえ。 香澄ちゃんとは小学校から一緒だったんでしょう?」 「そうなんですよ。 だからもうちっと考えてほしいんだけど、、、。」
二人が俺のことで話し合ってるのを聞いてしまった。 (こりゃ大変だ。)
図書館を出た所で2年の森崎裕翔が話しかけてきた。 「吉田さん 浦川さんって何処に居るか知ってます?」
「浦川? ああ、香澄か。 中に居るよ。」 「ああ、ありがとうございまーす。」
それから教室に戻ってきたんだけど何だか気持ちが落ち着かない。 5時間目は社会だ。
「ごめん。 体調が悪くなったから帰るわ。」 佐藤にそう伝えて教室を出る。
まだまだ香澄は図書館に居るみたい。 (今のうちに消えちまおう。)
そう思って俺は昇降口を出た。 駅前通りを歩いてみる。
真昼間の駅前は少し騒がしいくらいか。 電車が走っているのが見える。
ホームに来ると珍しく椅子に座った。 暖かい昼下がりだ。
もちろん、乗客が居るわけでもなく駅はガランとしている。 貨物列車がやってきた。
飛び込みたい気分だぜ。 どうしてくれるんだよ?
そんな時にスマホが鳴った。 「誰だよ?」
電話を掛けてきたのは香澄だった。 「何であいつが?」
「弘明君 大丈夫なの?」 「何が?」
「体調悪くて早退したって、、、。」 「ちょいとな、風邪ひいたみたいなんだよ。」
「本当に大丈夫なの?」 「心配か?」
「うん。 今何処なの?」 「これから電車に乗る所だよ。」
「まだ乗らないで。 すぐに行くから。」 「いいよ。 これから病院にも行くし、、、。」
「ダメ。 私が行くまで待ってて。」 そう言うと香澄はスマホを切った。
どうしようもねえやつだなあ。 これじゃあ仮病だってのがばれちまうじゃねえか。
だからって逃げるとあいつはまたまた泣きながら電話してくる。 「死んでやるーーーー。」なんて言い出すんだろうなあ。
電話してきてから30分ほど、、、。 2本の電車を見送ったところで香澄と律子がホームに飛び込んできた。
「何だい? 律子まで来たのか?」 「一緒に来てって言うもんだからさあ、、、。」
「弘明君 ほんとに大丈夫なの?」 「まだ分かんねえよ。」
「病気だったらどうしよう?」 「病院に行けば治るよ。」
「私なのよね?」 「何が?」
「私が弘明君を悩ませてるのよね?」 「そんなことは、、、。」
「はっきり言っていいのよ。 彼女なんだから。」 「まだ彼女って決まったわけじゃないだろう?」
「私は本気なの。 本気で心配してるの。」 「誰かのドラマみたいね。」
律子は香澄を見ながら呆れ顔である。 「どうなのよ?」
「どうって?」 「本当に体調悪いの?」
「悪いから帰るんだろうがよ。」 「ああ、また私を困らせる気ね?」
「だからやめなって。」 「やめないわよ。 彼女なんだから。」
「ほらほら電車が来たぞ。」 「ああ、逃げるなーーーー! こらーーー!」
またまたいつもの追いかけっこが始まった。 律子は知らない間に二人から離れていた。
電車に乗っても香澄は俺から離れない。 「うちに来てよ。」
「何でだよ?」 「看病してあげる。」
「お前がか?」 「だって心配なんだもん。」 「お前んちに行ったら母さんたちまで心配するだろうがよ。」
「じゃあ私が行くわ。」 「いいよいいよ。 治ったから。」
「嘘だったのね?」 「嘘じゃねえってば。」
「じゃあ、傍に居てもいいでしょう?」 「しゃあねえなあ。」
ってなわけで二人で駅を出たのであーーーる。 何年ぶりだろうなあ?
香澄が俺の家に来るのは、、、。 正直、うるさいんだけど。