~転生悪役令嬢の裏道攻略~ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド
「ええ兄上。剣術か武術か、いずれにしてもとんでもない使い手に思えます~。父上にご紹介したいくらいですね」
(やだわぁ)

 ジェミーとしてはそんなバトル漫画のようなやり取りは聞きたくなかった。彼女の愛した物語のジャンルは薄幸の美少女が活躍する恋愛モノなのだ。妙なフラグが立って、敵味方に別れてドンパチを繰り広げる展開になってしまったら、ふたりとも、どうしてくれる。

「そこ、私語禁止」
「「はっ」」

 ぴしゃりとふたりを黙らせて、ジェミーはウィリアムの指示通り、他の護衛を残してミリィだけを連れ屋敷の扉を潜った。そこでハッと息を吞む。

 あの外観は張りぼてではなかった。屋敷の中までも調度は非常に質の高いものたちで整えられ、下品な光物が多くないところが持ち主のセンスを感じさせる。
 働く使用人たちも統制が取れ、きびきびと仕事に励む姿からは主へのしっかりとした忠誠心が垣間見えた。
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