～転生悪役令嬢の裏道攻略～ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド

（どういうことだ、ジェミー。君は、私のことを憎からず思ってくれていたはずだよな？　なるだけ女性が喜ぶように、まめに気にかけた。手紙も贈り物も山ほどたくさん渡したし、彼女もそれを喜んでくれていたはず。いったい、なにが悪かった？）

　仕事に集中しなければならないのに、よぎるのはそのことばかり。
　ちなみにクラフトは別段ジェミーに恋愛感情を抱いてはいない。だが、そんなものはなくても人を喜ばせ、愛されていると思わせてやることはできる。昔から、彼はそうした行動をとることに苦を感じない人間だった。

　なんとなく人を見ていると、その人が望んでいることがわかる。だから、必要だと思った人間には積極的に近づいて、優しくしてやった。欲しているものを与えてやった。
　ある意味ではそれは、植物に水をあげたり、動物にエサをやるのに近い感情であったのかもしれない。他者に危害を加えたり、ずるがしこく打算的に近づいてくるやつらは別としても、彼にとって他の人間はほとんどすべてがそういう対象だった。クラフトという存在より、明確に低く位置づけられた生き物。彼らに向ける瞳には、慈しみと少しばかりの憐れみがあった。

　だといってもちろん自分の立場や、家族との関係をないがしろにしたわけではない。国王や王妃、側妃といった面々には大人しく頭を垂れたし、表面上は兄に対してもちゃんと年上としての敬意を払ったはずだ。