~転生悪役令嬢の裏道攻略~ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド
 だが、いくら完璧にそうしても、通じない人間はいるもの。兄や王太子の側近といった聡いもの、疑い深きものたちはクラフトを恐れ、近づかないようになった。それが彼にとってはまるで爪の隙間から抜けなくなった棘のような、些細だが不快なストレスであった。

(どうして私に反抗しようとする人がいるんだろう。従う方が楽でずっとうまくいくのに)

 そう感じていた彼が思いついたのが、次の国王の座に座ること。

(そうだ。この国で一番偉くなってしまえば、誰も私のすることに疑いを抱かなくなる。そうなれば、兄みたいな人たちも私の正しさを認めてくれるはず)

 クラフトは自分が常に一番正しい選択をできると信じている。そして、正しい自分が国を導けば国も正しく繫栄する。それこそが、より多くの人々にとっての幸せだと疑わなくなった。

 その日から、クラフトは自分が将来王座に就くための計画を開始した。当時クラフトは十二歳、王宮の教師たちからはとびぬけて優秀だと評価を受けていたが、三大公爵家は平和なこの時代に政争は無用だと考えたのか、新興のフーバー家が第一王子の後援を申し出た以外は、表立って王族と誼を結ぶことはしなかった。
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