~転生悪役令嬢の裏道攻略~ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド
 そして今回も、誰も気付かぬように巧妙に手を回し、玉座への鍵を(かす)め取った。
 デールは手に持つ薔薇を地面に払い落とし踏みにじる。舞い散った白い花弁が、庭園内を陽射しを浴びてきらきらと光りながら飛び去ってゆく。

 初めて興味を抱いた女すら奪われ、彼の口元に暗い笑みが浮かぶ。

(いっそ、ジェミーを強引に攫いどこかへ逃げてやるというのはどうだ? 誰の手も届かぬ隠れ家にでも幽閉し、一生手元で愛でてやれば、少しはこの耐えがたい溜飲も下がるやもしれん……)

 だが――。
 そんな考えはふと浮かんだジェミーの喜怒哀楽の激しい顔に流され、デールはフッと笑って首を振った。
 鳥は空を羽ばたき、手が届かぬからこそ美しい。あれから自由意思を奪ってしまえば、つまらぬものに成り下がるだけだ。

(きっと、あやつのようなやつらと、なにも考えず気ままに旅にでも出ていられれば、くだらん嫉妬など忘れていられるだろうに)

 自ら手の者をけしかけておいて、そんな想像をする自分のおかしさが、今は不快ではない。
 王権にあれほど感じていた執着が、わずかながら今は薄まっているのをデールは感じている。
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