~転生悪役令嬢の裏道攻略~ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド
(この局面で俺は、どうしてこんな馬鹿らしいことを頭に浮かべている? 少し前まではあんなにクラフトの動向に神経を尖らせていたというのに)

 ジェミーによって、今までとは違う感情に揺り動かされていることに気付くと、デールの頭は少しずつ冷静さを取り戻し、これまで長年自分を支配してきた怒りの源をゆっくりと理解していった。

 この、自らが玉座に収まるべしという飽くなきプライドは、生来の気質に加えクラフトが自分の弟として生まれたからこそ肥大化したもの。

 物心ついたころから、兄のくせに自分の想像の域を越えてこないと落胆するクラフトの目の奥の光が、ずっとデールの心を苛立たせてきた。だからこそ、これほどまでに……なにを犠牲にしてでもやつを排除したいという、煮え(たぎ)る嫉妬に突き動かされてきた。
 いつか唯一絶対の王者になり、やつを見返すために。

(情けない。それは、ずっとやつの目に怯え、縛られているのと同じことだろうが!)

 その無様さを自覚して、さっとデールの肌に赤みが差し、きつく噛んだ口の中に血の味が広がる。
 己に価値を見出させない自分こそが愚かなのだと、今ほど強く憤ったことはない。
< 763 / 952 >

この作品をシェア

pagetop