～転生悪役令嬢の裏道攻略～ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド

「そうなんだ。ごめんなさい、手を出すつもりはなかったの。お仕事大変そうねぇ」

　話の種にこんな広い農地を管理するのは大変だろうと労うと、彼はガハハとなんでもないことのように笑う。

「昔に比べたらそうでもねぇさ。以前はここには本当になにもなくてのう。わずかな作物を蓄えにして貧しい生活を送らんといかんかった。それが今の領主様が来てくだすって、ここで酒造りを始めてからずいぶん辺りも暮らし向きがよくなったんじゃ。酒造りなんぞと最初皆は反発したけど、そのおかげでおいらは家族に飯が食わせてやれてる。ありがてえこったよ」
（へぇ～）

　父に負けて引き篭もり、息子からも逃げ出された父親ということであまりイメージがよくなかったのだが、ルブロはどうやら街の人々には慕われているようだ。

「そうそうおじさん、その領主様のお屋敷の場所を聞きたかったの。どこにあるか教えてもらえる？」

　ジェミーが尋ねると、その人のよさそうなおじさんは、軍手でずっと先の方を指差した。

「ほれ、あっちにでっかい建物が見えるだろ。あの、真っ赤で目立つ屋根のお屋敷さ。あちらに、領主のルブロ様はいらっしゃる。あんた、ルブロ様になにか用なのかい？　とてもお貴族様には見えねえが」