~転生悪役令嬢の裏道攻略~ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド
「父上、ジェミーの言うことは真実です。先日、ボクを通して帝国からの大量の発注があったでしょう。それがその証だ」
「きっかけは、そちらの管理するシャトー・ルブロ・ヴォルドのワインを使用した菓子が、大きく皇帝陛下のご好評を賜ったことにあります。ならば、カーライルの力を借り、本腰を入れてあちらの国に輸出を始めれば、どうなると思われますか?」
「あ、あの広大な大国に、我が人生を捧げた成果が――? ……むう、だが、本当に認められるのであろうか」

 降って湧いた国外進出の構想に興奮しつつも、どこか踏み切れない自信のなさを滲ませるルブロ。彼を勇気づけるようにジェミーは誠心誠意語り掛ける。

「それは必ずしもお約束はできません。ですが、今後も知識豊かなカーライルの手を借りれば、きっとさらに、ヴォルド領の酒は進化していくはず。そしてそれが帝国に認められたなら、叔父様はご自身の手で誰にも成し得ない功績を掴むことになる。ゆくゆくは、世界中の醸造家たちがあなたを師と崇め、この地に教えを乞いに来るやもしれません。それはあなたにとってはある意味、公爵家の当主などよりよほど価値のあることなのでは?」
「こ、このわしが、そのような存在にか」

 ぶるぶると横に大きな体が震え、彼の心の揺らぎが最高潮に達するのを示した。
 そこでジェミーは彼に選択を迫り、手を伸ばした。
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