すれ違いだらけだった私たちが、最愛同士になれますか?~孤高のパイロットは不屈の溺愛でもう離さない~

長嶋と対処を確認し合いながら、徐々に右エンジンの出力を絞っていく。その反動で機体が左に流されないよう機体を安定させなくてはならないため、自動操縦から手動に切り替えた。

操縦桿を握る手に力がこもる。操縦桿を左にきると不安定に揺れたが、なんとか機体は平衡を保つことができた。

すでに高度を下げ始めているため、長嶋は管制官と通信し意見を交わしている。

副操縦士として空を飛び始めて六年経つが、こんなに重大なトラブルは初めての経験だった。間もなくして羽田空港が見えてくると、再びじわりと恐怖心が湧き上がってくる。

そんな時、脳裏に浮かんだのは美咲の笑顔だった。

『今日も無事に帰ってきてくれてありがとうって気持ちを込めて、美味しいご飯を作って待ってますね』

彼女のもとに帰り「ただいま」と言う。一緒に食卓を囲む。そうした幸せな日常を、自分だけでなく乗員乗客の誰ひとりとして奪わせはしない。

飛行機は最も安全な乗り物。その信頼を、決して裏切ってはいけないのだ。

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