マリアンヌに私のすべてをあげる
マリアンヌとレオナルド
アスカさんから聞かされた、とても信じ難い話。
レオナルド様の中に全く違う人物がいてるだなんて……
そのようなお話……私以外の誰も信じる人はいない。
ーーでも私には確信があった。
このそばかす……小さな頃から大キライだった私のそばかす。
ずっとコンプレックスだった。
レオナルド様と初めてお会いした時、私を見て露骨に嫌そうな顔をされていた。
それでも気のせいかも知れないと思いたい自分がいて……
なんとか家のためにも私を気に入っていただけるようにと、無理して明るく振る舞って一緒に過ごしていた日々。
自分を偽ってばかりいたら……いつの間にか本当の私が分からなくなっていた。
そんな日々の中で、レオナルド様から言われたあの一言が、私の心臓を突き刺した。
自分の顔を鏡で見るのもイヤになって、明るい自分を装うことも出来なくなってしまった。
私が自分の殻に閉じこもれば閉じこもるほどに、レオナルド様は私を嫌っていった。
一緒に過ごすほどに、自分のキライなところばかりが増えてゆく。
クセのあるこの髪も、この体だって……細くて、肉づきが悪くて……女性らしい体つきにもなれなくて。
でもいつかは、もっと成長すれば、大人になれば……今より良くなれるかもしれないと思っていたけど……
ーー私は私のままだった……
レオナルド様がいつもどこかへお連れして消えていかれるお相手は、大変お綺麗で、もちろんそばかすなんてなくて、クセのない美しい髪で、体つきも女性らしくって。
私なんかが到底敵わない……
何もかも諦めていた。
愛されることも愛することも。
そうすることでしか自分を守れなかったから。
結局私はレオナルド様を好きになれなかった……私自身のことも。
そして共に月日だけを重ね続けてた。
けれどあの日、あなたは私のそばかすを可愛いと言った。
何かの間違いじゃないかって耳を疑ってしまったけど……
あの時のあなたは、とても真っ直ぐな瞳で私を見てた。
あんなふうに見ていただけるだなんて……
あの絵だって……私をあんなふうに描いてくれるだなんて……
初めてあなたに心揺さぶられてる自分がいた。
ーー初めてだった……
どうして今まで一度たりとも私に見向きもしてくださらなかったあなたに、思い悩まされ続けてきたあなたに、こんなに心を乱されたりする自分がいるのかが不思議だった……
ーーだから私は確信出来た。
あの時の「あなた」はレオナルド様ではなかったのだと。
アスカさんから話を聞くまでは、レオナルド様が私を見てくれるようになったのかもと勘違いしてしまっていた。
レオナルド様が私を見てくれるようになれば、私もいつかはレオナルド様を想えるようになれるかもしれない、この偽りだらけの関係も何か変わるかもしれないって、そう思っていたの……
だけど私を見てくれていたのは、私の心を揺れ動かしたのは、レオナルド様ではなくアスカさんだったのね。
これからどうなるかなんて私にも分からない。
レオナルド様がいつか戻ってらっしゃるのか……何一つとして分からないけれど……
今はただ、私はアスカさんのことをお側で支えていきたい。
私達は良きお友達になれると思うから。