公爵令嬢の婚活事情〜王太子妃になりたくないので、好きな人と契約結婚はじめました〜
ハルに連れて行かれたのは、ストラル社の会議室。
ここなら人目を気にしなくていい、というのが一番の理由。
5年前兄との契約を満了したベルが公爵家を去って行き途方にくれて泣いていた時も、学園に編入したいと相談した時も、試験勉強で困った時も、いつもハルはここでシルヴィアの話を聞いてくれた。
「そんなわけで! 私悪役令嬢になろうと思うんです」
事のあらましを掻い摘んで話したシルヴィアは、最近流行りの小説を手にハルにそう宣言する。
「悪役令嬢」
シルヴィアから小説を受け取ったハルは"悪役令嬢"に視点を置いてパラパラと静かにページをめくる。
王子様が好きで仕方ない上流階級のお嬢様が、惹かれ合う身分違いの二人に嫉妬してヒロインを様々な罠にはめるのだが、たくましいヒロインに返り討ちにされてしまい、権力で一旦は王子様の婚約者になるものの真実の愛を前に惨敗。
ラストは自ら王子と婚約破棄し、自分だけの幸せを探しに退場してしまう物語の脇役。
確かどこかの国のお姫様がモデルになった話だったなと小説外の背景まで情報整理しつつ、ハルはシルヴィアが自分の元を訪れた意図と自分の役割について思考を巡らせる。
パズルのピースをはめていくように、話の流れを組み立て終わったハルは本を静かに閉じると、
「じゃあシルちゃん、"悪役令嬢"計画のための課題をあげていこうか?」
ノートを取り出して課題を書きはじめた。
「まぁ、悪役令嬢になるためにシルちゃんが付き纏い行為をしたらむしろあっという間に王子サイドに取り込まれて婚約待ったなしじゃない? っていうのは一旦置いておいて」
「……それは盲点だったわ」
言われて初めて気づいたとばかりにはっとしたシルヴィアの表情を見てクスクス笑ったハルは、
「まぁ、まずは王子を押し付けるヒロインの当てがない、って事かな」
そう言って問題点を指摘する。
「どうしてですか?」
社交界でも色めき立つほどカルロスは注目の的。シルヴィアは全くタイプではないが、王太子妃に憧れる女の子は多い。
彼が好みそうなロマンス的なイベントで出会えばヒロイン誕生は容易いのでは? と踏んでいたのだが。
「シルちゃん。イスラン王国は恋愛結婚が定着してる。その上カルロス殿下はその地位を脅かされる可能性がほぼないと言い切れるほど王太子としての立場が盤石だ」
ハルはイスラン王国とカルロスの人柄など情報をシルヴィアに説明する。
「つまりカルロス殿下が選んだのなら、たとえ平民であったとしても王太子妃になれる」
イスラン王国ではすでに前例がある。そして、その当時の王太子妃は随分と聡明だったようで国民からの支持も高かった。
「平民が王太子妃なんて。まさにシンデレラストーリーですね! なのに、難しいの?」
むしろ対象者増えそうじゃない? と疑問符を浮かべるシルヴィア。
「王太子が後ろ盾となる相手を必要とせず自由に伴侶を選べる。イスラン王国の治世はそれほど落ち着いている国なんだ」
成人まで婚約者を持たなくても周りに何も言われないほどに、とハルはシルヴィアに告げる。
「ハルさん、すごくイスラン王国の事情に詳しいですね」
「まぁ、イスラン王国王太子の留学を受け入れるにあたり色々と調整したのは外交省だからね」
「確かにそうだけど、お兄様のチーム、イスラン王国はエリア担当外では?」
カルロスが留学するにあたり確かに外交省が多々動いただろうが、シルヴィアの記憶ではルキは別のエリアの担当だ。
つまり、その部下のハルも直接関わってないはずだけどと首を傾げる。
「何せ上司がスパルタなのもので」
ふっ、とハルが遠い目をして深い深いため息を吐いたので、
「えっと、お兄様が本当にごめんね?」
いつも兄がお世話になっております、とそう言ったシルヴィアは今度ルキの部下の皆さまに差し入れする事を密かに誓った。
ここなら人目を気にしなくていい、というのが一番の理由。
5年前兄との契約を満了したベルが公爵家を去って行き途方にくれて泣いていた時も、学園に編入したいと相談した時も、試験勉強で困った時も、いつもハルはここでシルヴィアの話を聞いてくれた。
「そんなわけで! 私悪役令嬢になろうと思うんです」
事のあらましを掻い摘んで話したシルヴィアは、最近流行りの小説を手にハルにそう宣言する。
「悪役令嬢」
シルヴィアから小説を受け取ったハルは"悪役令嬢"に視点を置いてパラパラと静かにページをめくる。
王子様が好きで仕方ない上流階級のお嬢様が、惹かれ合う身分違いの二人に嫉妬してヒロインを様々な罠にはめるのだが、たくましいヒロインに返り討ちにされてしまい、権力で一旦は王子様の婚約者になるものの真実の愛を前に惨敗。
ラストは自ら王子と婚約破棄し、自分だけの幸せを探しに退場してしまう物語の脇役。
確かどこかの国のお姫様がモデルになった話だったなと小説外の背景まで情報整理しつつ、ハルはシルヴィアが自分の元を訪れた意図と自分の役割について思考を巡らせる。
パズルのピースをはめていくように、話の流れを組み立て終わったハルは本を静かに閉じると、
「じゃあシルちゃん、"悪役令嬢"計画のための課題をあげていこうか?」
ノートを取り出して課題を書きはじめた。
「まぁ、悪役令嬢になるためにシルちゃんが付き纏い行為をしたらむしろあっという間に王子サイドに取り込まれて婚約待ったなしじゃない? っていうのは一旦置いておいて」
「……それは盲点だったわ」
言われて初めて気づいたとばかりにはっとしたシルヴィアの表情を見てクスクス笑ったハルは、
「まぁ、まずは王子を押し付けるヒロインの当てがない、って事かな」
そう言って問題点を指摘する。
「どうしてですか?」
社交界でも色めき立つほどカルロスは注目の的。シルヴィアは全くタイプではないが、王太子妃に憧れる女の子は多い。
彼が好みそうなロマンス的なイベントで出会えばヒロイン誕生は容易いのでは? と踏んでいたのだが。
「シルちゃん。イスラン王国は恋愛結婚が定着してる。その上カルロス殿下はその地位を脅かされる可能性がほぼないと言い切れるほど王太子としての立場が盤石だ」
ハルはイスラン王国とカルロスの人柄など情報をシルヴィアに説明する。
「つまりカルロス殿下が選んだのなら、たとえ平民であったとしても王太子妃になれる」
イスラン王国ではすでに前例がある。そして、その当時の王太子妃は随分と聡明だったようで国民からの支持も高かった。
「平民が王太子妃なんて。まさにシンデレラストーリーですね! なのに、難しいの?」
むしろ対象者増えそうじゃない? と疑問符を浮かべるシルヴィア。
「王太子が後ろ盾となる相手を必要とせず自由に伴侶を選べる。イスラン王国の治世はそれほど落ち着いている国なんだ」
成人まで婚約者を持たなくても周りに何も言われないほどに、とハルはシルヴィアに告げる。
「ハルさん、すごくイスラン王国の事情に詳しいですね」
「まぁ、イスラン王国王太子の留学を受け入れるにあたり色々と調整したのは外交省だからね」
「確かにそうだけど、お兄様のチーム、イスラン王国はエリア担当外では?」
カルロスが留学するにあたり確かに外交省が多々動いただろうが、シルヴィアの記憶ではルキは別のエリアの担当だ。
つまり、その部下のハルも直接関わってないはずだけどと首を傾げる。
「何せ上司がスパルタなのもので」
ふっ、とハルが遠い目をして深い深いため息を吐いたので、
「えっと、お兄様が本当にごめんね?」
いつも兄がお世話になっております、とそう言ったシルヴィアは今度ルキの部下の皆さまに差し入れする事を密かに誓った。