公爵令嬢の婚活事情〜王太子妃になりたくないので、好きな人と契約結婚はじめました〜
 ドヤ顔で内定書を見せつけるシルヴィアを見ながら、好奇心旺盛なシルヴィアはさぞ楽しんで試験に挑んだんだろうなとハルは想像する。
 兄に公爵令嬢を採用するなんて、と言ったところで兄の後ろには人生楽しければ問題なし(オールオッケー)を全面に掲げるベロニカがいる。
 ベルとベロニカには逆らわない、とはなから白旗をあげているハルはこの線での説得を試みることを諦めた。

「使用人からお世話されなれてるお嬢様からしたら、庶民生活絶対大変だし、地味だから!」

 君には似合わないと思うと押し返してみたが、

「やってみなきゃ分からないじゃない!」

 常日頃ベルに鍛えられているシルヴィアはそれくらいではへこたれない。
 私結構自分の事は自分でできるのよ、とシルヴィアは胸を張る。

「やってみた後じゃ遅いから言ってるの」

 シルヴィアの提案に待ったをかけるハルは、

「シルちゃん、わざわざしなくていい苦労をする必要はないよ」

 いやいやいやいや、と言いつつ姉達を相手にしている時のようなやりづらさを感じ焦る。

「どうしてですか? ベロニカお姉様だってベルだって貴族だけど、外やお家で働いてるし自分の事は自分でしていますよ」

 想定していたかのように淀みなく返答するシルヴィアは、

「嫡男が爵位を継承し、タイトルなしで家を出た場合貴族の恩恵を受けられなくなるというのなら、ハルさんと私は同等の立場でしょ?」

 私が平民になっちゃいけない理由って何? と問われついにハルは言葉に詰まる。
 しまった、身内の悪影響がと姉二人の顔を思い浮かべ頭を抱えたハルに、

「さっき100でも200でもいいところあげてくれるって言ったのに」

 可愛いって言ってくれたのに、としゅんと目を伏せるシルヴィア。

「うん、シルちゃんは確かに可愛いよ」

 落ち込ませてしまった、と慌ててフォローしようとするハルを翻弄するように、

「好きか嫌いの二択なら、私ハルさんに嫌われてないと思うんですけど」

 私ならあなたを煩わせませんよ? と自信満々に微笑むシルヴィア。
 くるくる変わる表情からこの状況を楽しんでいるのが伺える。
 ついこの間まで子どもだと思っていたのに、いつの間に彼女はこんなに駆け引き上手になったんだろう、と押し切られそうになったハルは、

「僕まだ死にたくないって言ったでしょ!? 契約結婚なんてそんなの了承したら義兄さんから消されちゃうから」

 社会的にも物理的にも抹殺されるから無理とそんな事を口走る。

「なるほど、私との契約結婚が嫌なわけではなく、お兄様が怖い、と。つまりお兄様を説得できれば了承してくださるわけですね!」

 言質は取ったわと手を叩き、ボイスレコーダー片手にとってもいい笑顔で言い切ったシルヴィアは、

「じゃ、そろそろ帰ります」

 夕食の時間なので、と楽しげに帰っていった。

「強引。姉さんの悪影響が」

 本当にどうしてくれるの、コレ? と初めてシルヴィアに敗北したハルは、ルキがシルヴィアに説得されない事を祈った。
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