公爵令嬢の婚活事情〜王太子妃になりたくないので、好きな人と契約結婚はじめました〜
「大損?」

 眉を顰めつつ、この差し押さえの札は全部ルキの負け分なのだと知る。

「どういう事、ベル?」

「ふふふふふっ。シル様のおかえりが遅いので、当主を潰しておきました」

 我ながらシゴデキ過ぎて怖いわぁーとわざとらしくベルはそういう。

「つぶ?」

 物騒な単語にベルとルキの間で視線を彷徨わせたシルヴィアを見ながら、

「ほら、私も少しは力になれると思いますって言ったじゃないですか」

 そう言って笑ったベルは丸めた書類をシルヴィアに手渡した。

「何、これ?」

 書類を広げればそれは婚姻届で、署名欄に兄の名前が記載されていた。

「どうぞ良きようにお使いください」

 にっこりとアクアマリンの瞳が微笑む。

「え、ええーーー!?」

 なんで? と驚くシルヴィアに、

「ハルが社会的に抹殺されると困るので」

 ルキは妹が一番可愛いかもしれませんが、私は弟も義妹もどちらも可愛いのでと懸念事項は潰しときましたと改めて告げる。

「お誕生日には少し早いですが、無事就職も決まったシルさんにプレゼントです」

 ずらっと差し押さえられている家具や調度品を記載した一覧をシルヴィアに渡したベロニカは、

「お引越し時は物入りですからね! 一通り必要なものは揃ってます」

 ドヤ顔で公爵から巻き上げときましたと告げる。
 なるほど、どうやら二人はこのためにきてくれたらしいとストラル伯爵夫妻の参戦に心強く感じると同時に。

「ベルの援護が斜め上過ぎる」

 相変わらずなベルにクスクスと笑って、ありがとうとお礼を述べた。

「ところで、もしかしてこれ賭け金だったりする?」

 ホワイトボードを指さしたシルヴィアは、話したの? と頬を膨らませる。
 ハルへの恋心も悪役令嬢計画もベルにしか言ってないのにと目で訴えるシルヴィアに、

「シル様。お言葉ですが、シル様の恋心に気づいてないの、ハルだけですよ」

 割と周りにダダ漏れとベルは今更な事実をシルヴィアに突きつける。
 知ってた、と頷く大人達を前に現実を咀嚼し、理解に至ったシルヴィアは、

「はい? えっ? えっーーーー!?!?」

 頬を押さえ叫んだあと、

「嘘でしょ!? 伯爵とベロニカお姉様はともかく、お兄様にバレるなんて」

 激ニブなお兄様に限ってそんな事ってと結構失礼な事を真顔で発言する妹に、

「シル、さすがにお兄ちゃん傷つくよ?」

 付き合い年数で言えばこの中でダントツなのに、妹からの信頼が一番低いとルキは嘆いた。

「いや、だってお兄様だし」

「シルの俺へのあたりが年々ひどくなるの、絶対ベルのせいなんだけど」

 不満気にもらしたルキに、

「いやぁ、日頃の行いでしょ」

 ベルはバッサリ言い捨てた。
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