公爵令嬢の婚活事情〜王太子妃になりたくないので、好きな人と契約結婚はじめました〜
「……お兄様、いいの?」
正直なところどこまで把握されているのか読めないシルヴィアはただ率直に兄に尋ねる。
「まぁ、契約婚約してた俺が妹の婚姻にどの面下げて反対するんだっていうのももちろんあるんだけど。シルは、自分でやってみないと納得しないから」
心配は心配なんだけど、と盛大にため息をついたルキは、
「いつでも帰って来ていいよ。今時離婚も再婚も珍しくないし」
恋愛結婚が主流になりつつある近年、確かに珍しくないけれどそれは平民の場合だ。
こうもあっさり許可されると裏があるのではと疑いたくなるシルヴィアの思考は、
「俺としてはキッパリ諦めて帰っておいでっていうのが本音だけど。シルの恋路の結末外れてたら本当に全負けで大損なんだよねぇ」
全部差し押さえられちゃったと部屋中の調度品を指して肩を竦めるルキを見て止まる。
「妹で賭け事なんて最低ですよ?」
なんなのですか、コレは!? とホワイトボードをさして頬を膨らませる。
「しかもなんで私が逃げ帰ることに賭けてるのですか! ここはハッピーエンド一択でしょ!?」
「離婚からの再出発で、仕事に邁進! も充分ハッピーエンドでしょ」
何が幸せかなんて人それぞれだし、だなんてベルと出会う前だったら絶対言わなかっただろうセリフをルキが口にするのを聞き、シルヴィアは怒る気が失せる。
兄は本当に変わった。それも、とても良い方に。
「大穴はベロニカの悪役令嬢ルートだな」
流石にこれは無理じゃないか? とホワイトボードを指す伯爵。
「ふふっ。勝負は最後まで分からないから楽しいんですよ」
公爵令嬢の悪役令嬢計画なんてワクワクじゃないですか! とベロニカは猫のような大きな金眼を瞬かせ歌うようにそう言った。
「そういう伯爵はシル様推しですね」
「ああ。お嬢様にはすでに4年前から投資済みだしな」
4年前、ブルーノ公爵領が大災害に見舞われた時、彼女は一人で伯爵の前にやってきた。
『私の未来に投資してくれませんか』と。
それを受け入れた時から伯爵の心は決まっている。
「犬でも猫でも妹でも弟でも嫁でも、手を出したら最後まで責任取るのが大人としての務めだろう」
勿論、従業員でもと言った伯爵は、
「シルヴィア、先の決まった3年生は卒業課題さえ出してしまえば自由登校だ。学校に居辛ければストラル社に来て構わない」
ちょうどアルバイトの枠が空いていると告げ、
「さて、そろそろレノルドとアリッサが待ちくたびれてる頃だな」
脱走される前に帰るかとベロニカに帰宅を促す。
「脱走?」
二人の子どもはまだ小さいはずだけどと驚くシルヴィアに、
「自由過ぎるのは母親似だから諦めてる」
無事に帰ってくればよしと伯爵は肩をすくめた。
「あーまたそうやって伯爵はヒトのせいにする!」
伯爵だってヒトのこと言えないじゃないですか! とむくれるベロニカの銀糸を軽くポンと撫で、
「飽きない、って言ってる」
ふっと優しく表情を緩めてそう言った。
「ふふ。ならいいです」
金色の瞳を瞬かせ満足気にそう返したベロニカは、
「明日からもっと色々仕掛けますね」
と宣言する。
「……明日から繁忙期なんだけど」
「奇遇ですね、伯爵。私は年中無休で繁忙期です」
伯爵へのイタズラを考えるのに忙しくってと取り下げない。
これがベロニカの愛情表現なら仕方ないかと止めるのを諦めた伯爵は、明日からも大変だなと楽しそうにそう言った。
帰り際、ふと思い出したように足を止めた伯爵は、
「シルヴィア、契約時は最後まで気を抜かないこと」
そう助言を残して帰って行った。
ストラル伯爵夫妻の背中を見送るシルヴィアは、なんだかストラル社のラボに遊びに行くたびに伯爵に課題を出されていた時みたいねとそんなことを思っていた。
正直なところどこまで把握されているのか読めないシルヴィアはただ率直に兄に尋ねる。
「まぁ、契約婚約してた俺が妹の婚姻にどの面下げて反対するんだっていうのももちろんあるんだけど。シルは、自分でやってみないと納得しないから」
心配は心配なんだけど、と盛大にため息をついたルキは、
「いつでも帰って来ていいよ。今時離婚も再婚も珍しくないし」
恋愛結婚が主流になりつつある近年、確かに珍しくないけれどそれは平民の場合だ。
こうもあっさり許可されると裏があるのではと疑いたくなるシルヴィアの思考は、
「俺としてはキッパリ諦めて帰っておいでっていうのが本音だけど。シルの恋路の結末外れてたら本当に全負けで大損なんだよねぇ」
全部差し押さえられちゃったと部屋中の調度品を指して肩を竦めるルキを見て止まる。
「妹で賭け事なんて最低ですよ?」
なんなのですか、コレは!? とホワイトボードをさして頬を膨らませる。
「しかもなんで私が逃げ帰ることに賭けてるのですか! ここはハッピーエンド一択でしょ!?」
「離婚からの再出発で、仕事に邁進! も充分ハッピーエンドでしょ」
何が幸せかなんて人それぞれだし、だなんてベルと出会う前だったら絶対言わなかっただろうセリフをルキが口にするのを聞き、シルヴィアは怒る気が失せる。
兄は本当に変わった。それも、とても良い方に。
「大穴はベロニカの悪役令嬢ルートだな」
流石にこれは無理じゃないか? とホワイトボードを指す伯爵。
「ふふっ。勝負は最後まで分からないから楽しいんですよ」
公爵令嬢の悪役令嬢計画なんてワクワクじゃないですか! とベロニカは猫のような大きな金眼を瞬かせ歌うようにそう言った。
「そういう伯爵はシル様推しですね」
「ああ。お嬢様にはすでに4年前から投資済みだしな」
4年前、ブルーノ公爵領が大災害に見舞われた時、彼女は一人で伯爵の前にやってきた。
『私の未来に投資してくれませんか』と。
それを受け入れた時から伯爵の心は決まっている。
「犬でも猫でも妹でも弟でも嫁でも、手を出したら最後まで責任取るのが大人としての務めだろう」
勿論、従業員でもと言った伯爵は、
「シルヴィア、先の決まった3年生は卒業課題さえ出してしまえば自由登校だ。学校に居辛ければストラル社に来て構わない」
ちょうどアルバイトの枠が空いていると告げ、
「さて、そろそろレノルドとアリッサが待ちくたびれてる頃だな」
脱走される前に帰るかとベロニカに帰宅を促す。
「脱走?」
二人の子どもはまだ小さいはずだけどと驚くシルヴィアに、
「自由過ぎるのは母親似だから諦めてる」
無事に帰ってくればよしと伯爵は肩をすくめた。
「あーまたそうやって伯爵はヒトのせいにする!」
伯爵だってヒトのこと言えないじゃないですか! とむくれるベロニカの銀糸を軽くポンと撫で、
「飽きない、って言ってる」
ふっと優しく表情を緩めてそう言った。
「ふふ。ならいいです」
金色の瞳を瞬かせ満足気にそう返したベロニカは、
「明日からもっと色々仕掛けますね」
と宣言する。
「……明日から繁忙期なんだけど」
「奇遇ですね、伯爵。私は年中無休で繁忙期です」
伯爵へのイタズラを考えるのに忙しくってと取り下げない。
これがベロニカの愛情表現なら仕方ないかと止めるのを諦めた伯爵は、明日からも大変だなと楽しそうにそう言った。
帰り際、ふと思い出したように足を止めた伯爵は、
「シルヴィア、契約時は最後まで気を抜かないこと」
そう助言を残して帰って行った。
ストラル伯爵夫妻の背中を見送るシルヴィアは、なんだかストラル社のラボに遊びに行くたびに伯爵に課題を出されていた時みたいねとそんなことを思っていた。