公爵令嬢の婚活事情〜王太子妃になりたくないので、好きな人と契約結婚はじめました〜
「本当!?」
ぱぁぁぁーと表情を明るくしたシルヴィアを前に、慣れた手つきで書類を作り始めたハルは、
「ただし、結婚している事は不用意に言わないこと」
と条件の提示を行う。
「それじゃあ、意味ないじゃない」
「君はまだ未成年だし学生だ。必要に応じて話す分には構わないよ、殿下に迫られた時とか」
公爵家に問い合わせがあった時回答できれば充分でしょ、と例外条件を付け足す。
「分かったわ」
了承したシルヴィアに、
「結婚して家を出る君は公爵令嬢じゃないんだから、平民として生活してもらうよ」
ハルはさらに条件を追加する。
「住居はどうします?」
「今住んでる家が元々ルームシェア予定で借りたとこで広いから、そのまま君が来ればいい」
「ルームシェア?」
誰と一緒に済むつもりだったの? と喉まで出かかった言葉を言えなかったシルヴィアを尻目に、
「そう。部屋も分けられるし、家賃生活費折半。ちょうどいいでしょ」
自分の事は自分で、とハルはどんどん結婚条件を書き足していく。
「ああ。言うまでもないけど、庶民のアパートに君のうちにあるような家具類なんて入らないから、持って来ないでね」
差し押さえ札は早々に剥がしなさいとハルは返却を命じる。
「あと僕干渉されるの嫌いだから。基本的に自宅では放って置いて欲しい」
ごはんとか作って待ってるなんて絶対やめてといつもの笑顔で冷たい言葉を並べるハル。
「僕は僕の事を優先する。だから君もそうしたらいい」
「最初に言っていた通りですね。他には?」
「分かっていると思うけど、この結婚に愛はない」
だから、結婚式もしないし指輪もないとハルは提示する。
「それでも、本当に僕と結婚する?」
きっと僕は変わらないと言ったハルに、
「構わないわ」
とシルヴィアは楽しそうに告げた。
「契約期間はどちらかに好きな人ができるまで」
恋人を作る時は関係を清算してから、と沢山の条件を連ねた書類を作り上げ、
「これで良ければサインして」
契約結婚取り決め書をシルヴィアに差し出す。
シルヴィアは伯爵に助言された事を思い出し、隅々までよく読んでからそれにサインした。
「じゃあ、僕の番だね」
そう言ってハルは婚姻届に必要事項を記載する。
名前の欄で一旦手を止めたハルは、シルヴィアの方をじっと見る。
「……シルちゃん、僕はね」
神秘的で透明感のあるプラチナブランドの髪に濃紺の大きな瞳。まるで、絵本の中のお姫様みたいに綺麗な彼女。
例えば、件の王子様みたいな相手に望まれて結婚した方が幸せになれる確率は高いのではないだろうか。
こんな契約結婚なんかじゃなくて。
「シルちゃんには幸せになって欲しいと思ってる」
できたらシルヴィアに嫌われるような事はしたくないので、思いとどまってくれないだろうか、と期待を込めてその大きな瞳を覗き込んで見るけれど、
「ありがとうございます。私もハルさんが幸せだと嬉しいです」
気が合いますね、とにこにこ笑って全く引く気配がない。
圧強っと根負けしたハルは残りのスペルを静かに綴った。
「じゃあこれは私が役所に出しておきます」
出したフリをして手元に隠してましたを防止するため、婚姻届を回収したシルヴィアは、
「これからよろしくお願いしますね、ハルさん」
さっそくですが引越しの日取りを決めましょうか、とこれから先の新生活についてワクワクしながら話し始めた。
ぱぁぁぁーと表情を明るくしたシルヴィアを前に、慣れた手つきで書類を作り始めたハルは、
「ただし、結婚している事は不用意に言わないこと」
と条件の提示を行う。
「それじゃあ、意味ないじゃない」
「君はまだ未成年だし学生だ。必要に応じて話す分には構わないよ、殿下に迫られた時とか」
公爵家に問い合わせがあった時回答できれば充分でしょ、と例外条件を付け足す。
「分かったわ」
了承したシルヴィアに、
「結婚して家を出る君は公爵令嬢じゃないんだから、平民として生活してもらうよ」
ハルはさらに条件を追加する。
「住居はどうします?」
「今住んでる家が元々ルームシェア予定で借りたとこで広いから、そのまま君が来ればいい」
「ルームシェア?」
誰と一緒に済むつもりだったの? と喉まで出かかった言葉を言えなかったシルヴィアを尻目に、
「そう。部屋も分けられるし、家賃生活費折半。ちょうどいいでしょ」
自分の事は自分で、とハルはどんどん結婚条件を書き足していく。
「ああ。言うまでもないけど、庶民のアパートに君のうちにあるような家具類なんて入らないから、持って来ないでね」
差し押さえ札は早々に剥がしなさいとハルは返却を命じる。
「あと僕干渉されるの嫌いだから。基本的に自宅では放って置いて欲しい」
ごはんとか作って待ってるなんて絶対やめてといつもの笑顔で冷たい言葉を並べるハル。
「僕は僕の事を優先する。だから君もそうしたらいい」
「最初に言っていた通りですね。他には?」
「分かっていると思うけど、この結婚に愛はない」
だから、結婚式もしないし指輪もないとハルは提示する。
「それでも、本当に僕と結婚する?」
きっと僕は変わらないと言ったハルに、
「構わないわ」
とシルヴィアは楽しそうに告げた。
「契約期間はどちらかに好きな人ができるまで」
恋人を作る時は関係を清算してから、と沢山の条件を連ねた書類を作り上げ、
「これで良ければサインして」
契約結婚取り決め書をシルヴィアに差し出す。
シルヴィアは伯爵に助言された事を思い出し、隅々までよく読んでからそれにサインした。
「じゃあ、僕の番だね」
そう言ってハルは婚姻届に必要事項を記載する。
名前の欄で一旦手を止めたハルは、シルヴィアの方をじっと見る。
「……シルちゃん、僕はね」
神秘的で透明感のあるプラチナブランドの髪に濃紺の大きな瞳。まるで、絵本の中のお姫様みたいに綺麗な彼女。
例えば、件の王子様みたいな相手に望まれて結婚した方が幸せになれる確率は高いのではないだろうか。
こんな契約結婚なんかじゃなくて。
「シルちゃんには幸せになって欲しいと思ってる」
できたらシルヴィアに嫌われるような事はしたくないので、思いとどまってくれないだろうか、と期待を込めてその大きな瞳を覗き込んで見るけれど、
「ありがとうございます。私もハルさんが幸せだと嬉しいです」
気が合いますね、とにこにこ笑って全く引く気配がない。
圧強っと根負けしたハルは残りのスペルを静かに綴った。
「じゃあこれは私が役所に出しておきます」
出したフリをして手元に隠してましたを防止するため、婚姻届を回収したシルヴィアは、
「これからよろしくお願いしますね、ハルさん」
さっそくですが引越しの日取りを決めましょうか、とこれから先の新生活についてワクワクしながら話し始めた。