公爵令嬢の婚活事情〜王太子妃になりたくないので、好きな人と契約結婚はじめました〜
商会も軌道に乗って仕事を任せられる人材が揃って来た頃、ベルから妊娠を告げられた。
子ども好きのベルの事だから、実家に戻って来てある程度子育てが落ち着くまで仕事を休むものだと思っていたのだが。
「産後2ヶ月たったら在宅でできることからはじめて、3ヶ月から週一出社。6ヶ月で時短復帰しようと思うの」
今一番やりたいところなのよね、と言ったベルは楽しそうに今後の事業展開について述べる。
姉はやると言ったら絶対譲らない。が、家庭を蔑ろにするタイプでもないし、公爵家ならシッターでも専属メイドでも雇い放題だろう。
「そっか、応援する。できるところは協力するから」
一般的ではない選択かもしれないが、それがベルの幸せだというのなら止める必要もない。
人一倍苦労と努力を重ねた姉が選んだ選択を尊重したい。それはハルの素直な気持ちだった。
「さっすが、ハル! そう言ってくれると思ってた」
ハル大好き、といくつになってもブラコン全開のベルの抱擁を受け止めつつ、
「姉さん、人妻それも公爵夫人なんだからもう少し落ち着きなよ」
ルキ様の視線が痛いんだけどと一応は嗜めるハル。
ベルが嬉しそうならまぁいいか、と大抵は流すハルに、
「まぁ、そんなわけで私は働こうと思うんだけど、代わりにルキが休むから」
爆弾を投下したのもいつも通り姉だった。
「ん?」
待って、どういう事? と理解が追いつかなかったハルに、
「ベルだけ子育てのために仕事をセーブするのはフェアじゃないだろ。だから、俺も仕事セーブしようかな、って」
追い討ちをかけたのはルキだった。
「待ってください、それはつまりルキ様が仕事を休んで子どもを見るってことですか?」
ルキは外交省でも管理職、それも重要なポストについており、現状彼の抜けた穴を埋められる人間はいない。
それを差し引いても、仕事特化型で生粋の上流階級育ちそれも公爵位を持つルキがそんな事を言い出すなんてハルは夢にも思わなかった。
「休む、っていってもずっとじゃないよ。飛び飛びだったり、半日だったり、その時の状況を見ながら調整はする」
そう言ってルキは話を続ける。
「ただまぁ、残業はなるべくしないし、子どもが少なくとも1歳過ぎるまでは長期出張は入れたくないと思ってるよ」
外交省は華やかに見えてその実かなり激務だ。他国の王族が滞在する時には王城に詰めて帰れない事もある。
ルキは今までずっとそれを最前線で担ってきた。
そして、ルキはそれを誇りに思っていたはずなのに。
「自分でも突拍子もない事を言ってるって分かっている」
前例がない。
それは良くも悪くも注目を集めるし、おそらく全ての人に好意的に解釈してもらうのは難しい。
ルキの不在を狙って彼を蹴落とそうと考える輩がいないとも限らない。
そんなリスクをルキが考えないはずがない。その上で、ルキはそうしたいのだという。
「本気、ですか?」
ハルの問いかけに静かに頷いたルキは、
「実はこの件はレインにも相談しているんだ」
今から準備すればできると思っていると話す。
「それに、不在を任せられる優秀な後輩もいる事だしね」
協力して欲しい、と頼まれてハルには断る理由がなかった。
姉であるベルのため、というのは勿論だが単純に仕事面でずっと世話になってきたルキに戦力として数えてもらえたのが嬉しかったから。
子ども好きのベルの事だから、実家に戻って来てある程度子育てが落ち着くまで仕事を休むものだと思っていたのだが。
「産後2ヶ月たったら在宅でできることからはじめて、3ヶ月から週一出社。6ヶ月で時短復帰しようと思うの」
今一番やりたいところなのよね、と言ったベルは楽しそうに今後の事業展開について述べる。
姉はやると言ったら絶対譲らない。が、家庭を蔑ろにするタイプでもないし、公爵家ならシッターでも専属メイドでも雇い放題だろう。
「そっか、応援する。できるところは協力するから」
一般的ではない選択かもしれないが、それがベルの幸せだというのなら止める必要もない。
人一倍苦労と努力を重ねた姉が選んだ選択を尊重したい。それはハルの素直な気持ちだった。
「さっすが、ハル! そう言ってくれると思ってた」
ハル大好き、といくつになってもブラコン全開のベルの抱擁を受け止めつつ、
「姉さん、人妻それも公爵夫人なんだからもう少し落ち着きなよ」
ルキ様の視線が痛いんだけどと一応は嗜めるハル。
ベルが嬉しそうならまぁいいか、と大抵は流すハルに、
「まぁ、そんなわけで私は働こうと思うんだけど、代わりにルキが休むから」
爆弾を投下したのもいつも通り姉だった。
「ん?」
待って、どういう事? と理解が追いつかなかったハルに、
「ベルだけ子育てのために仕事をセーブするのはフェアじゃないだろ。だから、俺も仕事セーブしようかな、って」
追い討ちをかけたのはルキだった。
「待ってください、それはつまりルキ様が仕事を休んで子どもを見るってことですか?」
ルキは外交省でも管理職、それも重要なポストについており、現状彼の抜けた穴を埋められる人間はいない。
それを差し引いても、仕事特化型で生粋の上流階級育ちそれも公爵位を持つルキがそんな事を言い出すなんてハルは夢にも思わなかった。
「休む、っていってもずっとじゃないよ。飛び飛びだったり、半日だったり、その時の状況を見ながら調整はする」
そう言ってルキは話を続ける。
「ただまぁ、残業はなるべくしないし、子どもが少なくとも1歳過ぎるまでは長期出張は入れたくないと思ってるよ」
外交省は華やかに見えてその実かなり激務だ。他国の王族が滞在する時には王城に詰めて帰れない事もある。
ルキは今までずっとそれを最前線で担ってきた。
そして、ルキはそれを誇りに思っていたはずなのに。
「自分でも突拍子もない事を言ってるって分かっている」
前例がない。
それは良くも悪くも注目を集めるし、おそらく全ての人に好意的に解釈してもらうのは難しい。
ルキの不在を狙って彼を蹴落とそうと考える輩がいないとも限らない。
そんなリスクをルキが考えないはずがない。その上で、ルキはそうしたいのだという。
「本気、ですか?」
ハルの問いかけに静かに頷いたルキは、
「実はこの件はレインにも相談しているんだ」
今から準備すればできると思っていると話す。
「それに、不在を任せられる優秀な後輩もいる事だしね」
協力して欲しい、と頼まれてハルには断る理由がなかった。
姉であるベルのため、というのは勿論だが単純に仕事面でずっと世話になってきたルキに戦力として数えてもらえたのが嬉しかったから。