公爵令嬢の婚活事情〜王太子妃になりたくないので、好きな人と契約結婚はじめました〜
真面目なシルヴィアの事だから素直に全部自分でやろうとして失敗してそのうち音を上げるだろうと思っていたのに、いつになく冷静だ。
この短時間でよく整えてきたなって、感心している場合じゃなかったと本来の目的(シルヴィアを追い返す)を思い出す。
「……その費用は一体どこから?」
公爵家の援助は禁止、って言ったよね? と淡々とした口調で突き放すようにそういえば、
「自分で稼いだ個人資産よ」
私、王城に八つの時から上がっているのとシルヴィアは得意気に話す。
「例えば、他国の王族のお相手をしたり、うちの姫様の淑女教育のためにお話に上がったり。そうして役目を果たせば私個人に褒賞が出るの」
公爵家にいた時は特に使い道もなかったので公爵家お抱えの財産管理人ずっと預けて投資に回してもらっていた資産。
管理人を確認したところ、随分な金額に増えていた。さすが公爵家お抱えの管理人。
今後も継続して個人雇い可能か打診して、先程再契約してきたところだ。
「あとは10歳くらいから学園に編入するまで公爵領にある街を一つ経営していたから、その利益の一部や管理費をお給料として頂いてたりとか」
他にも色々、とシルヴィアは今まで培ったものを並べ、
「公爵令嬢として生きていくには足りないかもだけど、平民として生きていくなら充分な資産だと思うの」
だからこの生活のために自己投資することにしたの、とシルヴィアはお金の使い道を話す。
「なんていうか、こう住む世界が違い過ぎるんだけど」
スケールが違い過ぎる、と改めて彼女は雲の上の人だなと思ったハルに、
「それは仕方ないんじゃないかなって思うんです」
濃紺の瞳は真っ直ぐ笑いかける。
公爵令嬢として生きてきた。
身につけた教養も積み重ねた時間もハルとは違う。
「でも、自分の意思で公爵家を出きた私は契約とはいえ今はハルさんの家族でしょう?」
今までの生き方が違ったとしても、これから先お互いを知っていく時間はあるのだから。
「だから、家庭教師を雇いたいと思って」
シルヴィアは好きな人に歩み寄る方法を知りたいと思う。
「家庭教師?」
「そう、ここで生きていくために自分で色々できるようになるための」
とりあえずシャワーの使い方からと言ったシルヴィアは、
「生活に干渉しない、って事でしたけど、ハルさんの空き時間を私の家庭教師として雇用したいのです」
対価を払って師事を仰ぐ分には干渉にはならないでしょ? と律儀に条件を示しながらシルヴィアは尋ねる。
「ごはんを作って待ってちゃダメとは言われましたけど、一緒に作っちゃダメとは言われてないですし」
ダメでしょうか? とシルヴィアが見つけてきた解決策を聞き、ハルは目を瞬かせる。
少しシルヴィアの目が腫れている。きっと、たくさん悩んで泣いたのだろう。
もし、シルヴィアの取った手段がただの泣き落としだったら気持ちが動くことはなかったのだが。
「……はぁ、僕こういうのに弱いんだよねぇ」
どんな方法であれ真剣に向き合おうとする相手を蔑ろにはできない。
それが、妹のように可愛い存在なら尚更。
「……シルちゃん、フロランタン食べる?」
「すっごく好き」
食べたいっとぱぁぁぁーと表情を輝かせたシルヴィアの濃紺の瞳を見ながら、
「知ってる」
と笑ってシルヴィアの髪を撫でたハルは、彼女を公爵家に返すのは長期戦かもなと覚悟した。
この短時間でよく整えてきたなって、感心している場合じゃなかったと本来の目的(シルヴィアを追い返す)を思い出す。
「……その費用は一体どこから?」
公爵家の援助は禁止、って言ったよね? と淡々とした口調で突き放すようにそういえば、
「自分で稼いだ個人資産よ」
私、王城に八つの時から上がっているのとシルヴィアは得意気に話す。
「例えば、他国の王族のお相手をしたり、うちの姫様の淑女教育のためにお話に上がったり。そうして役目を果たせば私個人に褒賞が出るの」
公爵家にいた時は特に使い道もなかったので公爵家お抱えの財産管理人ずっと預けて投資に回してもらっていた資産。
管理人を確認したところ、随分な金額に増えていた。さすが公爵家お抱えの管理人。
今後も継続して個人雇い可能か打診して、先程再契約してきたところだ。
「あとは10歳くらいから学園に編入するまで公爵領にある街を一つ経営していたから、その利益の一部や管理費をお給料として頂いてたりとか」
他にも色々、とシルヴィアは今まで培ったものを並べ、
「公爵令嬢として生きていくには足りないかもだけど、平民として生きていくなら充分な資産だと思うの」
だからこの生活のために自己投資することにしたの、とシルヴィアはお金の使い道を話す。
「なんていうか、こう住む世界が違い過ぎるんだけど」
スケールが違い過ぎる、と改めて彼女は雲の上の人だなと思ったハルに、
「それは仕方ないんじゃないかなって思うんです」
濃紺の瞳は真っ直ぐ笑いかける。
公爵令嬢として生きてきた。
身につけた教養も積み重ねた時間もハルとは違う。
「でも、自分の意思で公爵家を出きた私は契約とはいえ今はハルさんの家族でしょう?」
今までの生き方が違ったとしても、これから先お互いを知っていく時間はあるのだから。
「だから、家庭教師を雇いたいと思って」
シルヴィアは好きな人に歩み寄る方法を知りたいと思う。
「家庭教師?」
「そう、ここで生きていくために自分で色々できるようになるための」
とりあえずシャワーの使い方からと言ったシルヴィアは、
「生活に干渉しない、って事でしたけど、ハルさんの空き時間を私の家庭教師として雇用したいのです」
対価を払って師事を仰ぐ分には干渉にはならないでしょ? と律儀に条件を示しながらシルヴィアは尋ねる。
「ごはんを作って待ってちゃダメとは言われましたけど、一緒に作っちゃダメとは言われてないですし」
ダメでしょうか? とシルヴィアが見つけてきた解決策を聞き、ハルは目を瞬かせる。
少しシルヴィアの目が腫れている。きっと、たくさん悩んで泣いたのだろう。
もし、シルヴィアの取った手段がただの泣き落としだったら気持ちが動くことはなかったのだが。
「……はぁ、僕こういうのに弱いんだよねぇ」
どんな方法であれ真剣に向き合おうとする相手を蔑ろにはできない。
それが、妹のように可愛い存在なら尚更。
「……シルちゃん、フロランタン食べる?」
「すっごく好き」
食べたいっとぱぁぁぁーと表情を輝かせたシルヴィアの濃紺の瞳を見ながら、
「知ってる」
と笑ってシルヴィアの髪を撫でたハルは、彼女を公爵家に返すのは長期戦かもなと覚悟した。