公爵令嬢の婚活事情〜王太子妃になりたくないので、好きな人と契約結婚はじめました〜
「……で、何でこんなことになってるの!?」
ハルは額に手を当て、心底呆れたようにため息をついてシルヴィアに尋ねる。
帰宅したハルを待ち受けていたのは、自宅前の人だかり。
ただし、危惧したような火事ではなかったけれど。
「……え、えーっと……なん、で……と言われましても」
なんでこんなことになったんだろう?
うーん、と困った顔で考え込んだシルヴィアは本日ここに至るまでの出来事を回想する。
いつもより早く仕事が終了し、時間に余裕があったシルヴィアは久しぶりに自炊にチャレンジしてみよう! と思い至った。
とはいえ、いつものようにベルや使用人達がフォローしてくれるわけでもなく、今住んでいる自宅のキッチンは馴染みのない仕様。
ハルから同居条件として共用スペースは綺麗に保つように言われているし、どうしたものかしらと悩んでいるとタイミング良くベロニカに遭遇した。
「どうしたのです? シルさん」
と聞いてくれたベロニカに今日の夕食どうしようと相談した結果、ポンっと手を打ってにこやかに渡されたのは新しく開発中だというスモークチップで。
「知っていますか、シルさん。大抵のモノは火を通せば食べられるのですよ」
そう言ったベロニカから簡易薫製機の作り方と使い方のレクチャーを受けた。
ベルが昔ルキの誕生日プレゼントに石窯を手作りして以来、度々公爵家のお庭でアウトドアクッキングはしていたし、公爵領で災害があった時に炊き出しの支援をした事もある。
いける気がする! となんて楽観的に思ったのは多分伯爵に期待しているなんて言われてテンションがぶち上がっていたせいだろう。
そのままのノリで大家さんを突撃し、事情を話したら、火の扱いにさえ気をつけてくれたら家の前を使っていいよとあっさり許可された。
この時点ではあくまでこっそりひっそり自分だけで楽しむつもりだったのだけど。
「思った以上に煙が出て、その上結構匂いが充満したものだから、沢山人が来ちゃって」
じっと見ていた子どもたちが物欲しそうな顔をしていたので、沢山あるし、まっいいか! くらいのノリで、食べる? とベーコンを差し出したのをきっかけに、大人も子どもも集まりだして。
そのうち燻製だけでは足りないと、各々食材を持ち寄り、どこから出てきたのか分からない道具で色々焼き始め。
気づけばあちらでは酒盛りがはじまり、こちらでは商売がはじまって。
あっという間に収集のつかないちょっとしたお祭り騒ぎになってしまっていたのだった。
ハルは額に手を当て、心底呆れたようにため息をついてシルヴィアに尋ねる。
帰宅したハルを待ち受けていたのは、自宅前の人だかり。
ただし、危惧したような火事ではなかったけれど。
「……え、えーっと……なん、で……と言われましても」
なんでこんなことになったんだろう?
うーん、と困った顔で考え込んだシルヴィアは本日ここに至るまでの出来事を回想する。
いつもより早く仕事が終了し、時間に余裕があったシルヴィアは久しぶりに自炊にチャレンジしてみよう! と思い至った。
とはいえ、いつものようにベルや使用人達がフォローしてくれるわけでもなく、今住んでいる自宅のキッチンは馴染みのない仕様。
ハルから同居条件として共用スペースは綺麗に保つように言われているし、どうしたものかしらと悩んでいるとタイミング良くベロニカに遭遇した。
「どうしたのです? シルさん」
と聞いてくれたベロニカに今日の夕食どうしようと相談した結果、ポンっと手を打ってにこやかに渡されたのは新しく開発中だというスモークチップで。
「知っていますか、シルさん。大抵のモノは火を通せば食べられるのですよ」
そう言ったベロニカから簡易薫製機の作り方と使い方のレクチャーを受けた。
ベルが昔ルキの誕生日プレゼントに石窯を手作りして以来、度々公爵家のお庭でアウトドアクッキングはしていたし、公爵領で災害があった時に炊き出しの支援をした事もある。
いける気がする! となんて楽観的に思ったのは多分伯爵に期待しているなんて言われてテンションがぶち上がっていたせいだろう。
そのままのノリで大家さんを突撃し、事情を話したら、火の扱いにさえ気をつけてくれたら家の前を使っていいよとあっさり許可された。
この時点ではあくまでこっそりひっそり自分だけで楽しむつもりだったのだけど。
「思った以上に煙が出て、その上結構匂いが充満したものだから、沢山人が来ちゃって」
じっと見ていた子どもたちが物欲しそうな顔をしていたので、沢山あるし、まっいいか! くらいのノリで、食べる? とベーコンを差し出したのをきっかけに、大人も子どもも集まりだして。
そのうち燻製だけでは足りないと、各々食材を持ち寄り、どこから出てきたのか分からない道具で色々焼き始め。
気づけばあちらでは酒盛りがはじまり、こちらでは商売がはじまって。
あっという間に収集のつかないちょっとしたお祭り騒ぎになってしまっていたのだった。