公爵令嬢の婚活事情〜王太子妃になりたくないので、好きな人と契約結婚はじめました〜
その7.公爵令嬢と憂鬱の吹き飛ばし方。
外交省の休憩スペースで、ハルは熱心に何かを読んでいた。
「ハル、何を見てるんだ?」
持参した昼食もそこそこにペンを走らせている様子を見たルキは、同席していいか? と声をかける。
「お疲れ様です。ん、ちょっと初心者向けの料理のレシピを……ってあれ? 今日は管理職のランチミーティングじゃありませんでしたっけ?」
ルキの声かけに驚いたハルは同席を了承し、場所をあけながら尋ねる。
「ん? 面倒だから、適当なとこで切り上げてきた」
アレ中身ないから、とルキは苦笑し、持参したコーヒーを飲む。
ランチミーティングとは名ばかりの腹の探り合い。それだけならまだいいが、最近はルキが仕事をセーブしている件についての嫌味や非難が大半をしめる。
仕事をセーブし家庭を優先すると決めた時から予想ができていたし、譲る気もない以上あの話し合いは無意味だ。
ルキの子育て休暇は正式に許可を得ているし、実績報告はしている。
レインが中心になって取りまとめてくれているおかげで、業務が滞ることもない。
何よりつい過重労働になりがちだった外交省の勤務体制の見直しがされはじめ、若手を中心に好評だ。
とはいえ、全員が好意的なわけではない。
それを宥めるのも選択に伴う自身の責任だとルキは思っていた。
「毎回大変ですね」
「ん? ベルとの夫婦喧嘩に比べたら大したことないよ」
「喧嘩、ってなんでそんな楽しそうなんですか」
というかこの二人の間で喧嘩なんて成立するのか? と疑問を掲げるハルに、
「割と高頻度で揉める。生まれも育った環境も考え方も、ベルとはだいぶ違うから」
穏やかな顔でそう言ったルキは、
「その度に沢山発見があって、やっぱりベルが好きだなぁって思うよ」
何かを思い出したようにクスクス笑った。
「結局惚気じゃないですか」
幸せそうで何よりと軽く流したハルは、食べかけだった昼食に手を伸ばす。
「相変わらず美味しそうな……って、すごく焦げてないか? この卵焼き」
形もぐちゃぐちゃでかろうじて卵焼きと分かるレベル。
いつものハルのお弁当とは若干異なるラインナップ。
「あっ、食べるならこっちにしてください」
この辺、とさしながらハルは別のおかずを勧める。
その一帯はいつも通り彩りが綺麗で美味しそうなおかずが並ぶ。まぁいつもと違ってだいぶ可愛らしいピックが刺さっていたり、おにぎりが猫の形だったりするけれど。
不思議そうにじっと見てくるルキに、
「家庭教師を引き受けることにしたので」
またボヤ騒動を起こされても困るし、と予測不能なお嬢様を思い浮かべクスッと笑ったハルは、
「とりあえず、簡単な調理から教えようかなって」
朝早起きして卵焼き頑張ったんですよ、と微笑ましそうに報告した。
「ハル、何を見てるんだ?」
持参した昼食もそこそこにペンを走らせている様子を見たルキは、同席していいか? と声をかける。
「お疲れ様です。ん、ちょっと初心者向けの料理のレシピを……ってあれ? 今日は管理職のランチミーティングじゃありませんでしたっけ?」
ルキの声かけに驚いたハルは同席を了承し、場所をあけながら尋ねる。
「ん? 面倒だから、適当なとこで切り上げてきた」
アレ中身ないから、とルキは苦笑し、持参したコーヒーを飲む。
ランチミーティングとは名ばかりの腹の探り合い。それだけならまだいいが、最近はルキが仕事をセーブしている件についての嫌味や非難が大半をしめる。
仕事をセーブし家庭を優先すると決めた時から予想ができていたし、譲る気もない以上あの話し合いは無意味だ。
ルキの子育て休暇は正式に許可を得ているし、実績報告はしている。
レインが中心になって取りまとめてくれているおかげで、業務が滞ることもない。
何よりつい過重労働になりがちだった外交省の勤務体制の見直しがされはじめ、若手を中心に好評だ。
とはいえ、全員が好意的なわけではない。
それを宥めるのも選択に伴う自身の責任だとルキは思っていた。
「毎回大変ですね」
「ん? ベルとの夫婦喧嘩に比べたら大したことないよ」
「喧嘩、ってなんでそんな楽しそうなんですか」
というかこの二人の間で喧嘩なんて成立するのか? と疑問を掲げるハルに、
「割と高頻度で揉める。生まれも育った環境も考え方も、ベルとはだいぶ違うから」
穏やかな顔でそう言ったルキは、
「その度に沢山発見があって、やっぱりベルが好きだなぁって思うよ」
何かを思い出したようにクスクス笑った。
「結局惚気じゃないですか」
幸せそうで何よりと軽く流したハルは、食べかけだった昼食に手を伸ばす。
「相変わらず美味しそうな……って、すごく焦げてないか? この卵焼き」
形もぐちゃぐちゃでかろうじて卵焼きと分かるレベル。
いつものハルのお弁当とは若干異なるラインナップ。
「あっ、食べるならこっちにしてください」
この辺、とさしながらハルは別のおかずを勧める。
その一帯はいつも通り彩りが綺麗で美味しそうなおかずが並ぶ。まぁいつもと違ってだいぶ可愛らしいピックが刺さっていたり、おにぎりが猫の形だったりするけれど。
不思議そうにじっと見てくるルキに、
「家庭教師を引き受けることにしたので」
またボヤ騒動を起こされても困るし、と予測不能なお嬢様を思い浮かべクスッと笑ったハルは、
「とりあえず、簡単な調理から教えようかなって」
朝早起きして卵焼き頑張ったんですよ、と微笑ましそうに報告した。