公爵令嬢の婚活事情〜王太子妃になりたくないので、好きな人と契約結婚はじめました〜
「あら、シルさんどうしたんですか?」

 昼食後だというのに力なく机に突っ伏しているシルヴィアに、ベロニカが声をかける。

「ベロニカお姉様ーーー!」

 わぁーっと泣き出しそうな勢いで抱きついたシルヴィアは、

「殻がっ」

 と訴える。

「……から?」

 はて? と首を傾げたベロニカはとりあえずシルヴィアをよしよしと撫で撫でしつつ事情を聞く。
 ハルに料理を習い始めたが、卵がまともに割れず、殻が入りまくっていること。
 先週からずっと卵料理が続いていることなど、一通り話を聞いたあと、

「もういっそのこと伯爵に卵の殻割り器でも作ってもらったらいいんじゃないですか?」

 これで解決です! とベロニカはドヤ顔で最適解をシルヴィアに示す。

「伯爵の専門外」

「伯爵器用だからおねだりしたら大抵作ってくれますよ?」

 ドレスのリメイクから結婚指輪まで、とベロニカは自身の指に嵌めている指輪を見せる。

「……伯爵」

 石窯を勝手に公爵家の庭にDIYしていたベルを思い浮かべ、ストラル家の人ド器用過ぎるとシルヴィアは苦笑する。

「うぅ、毎日ハルさんに卵料理量産させるの申し訳なさすぎる。でも、自分でできるようになりたいし」

 こっそり練習するには、もういっそのこと養鶏場ごと買い占めるしかっ! と割とガチトーンでいったシルヴィアに、

「あらあら、卵の価格が高騰しそうですね」

 ナツさん泣いちゃいますよ? と笑いを噛み締めた声がした。

「ベル! どうしたの?」

 驚いた顔で駆け寄ってきたシルヴィアに、

「今後の事業について打ち合わせがありまして。ついでにシル様のお仕事ぶりも拝見したいなって」

 シル様にも会いたかったのでとベルは笑いかける。

「頑張ってるみたいですね」

 さすがシル様、と義妹の奮闘ぶりを讃えた。
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