公爵令嬢の婚活事情〜王太子妃になりたくないので、好きな人と契約結婚はじめました〜
気を利かせて席を外したベロニカが淹れてくれたお茶を飲みつつ、
「なんだか、すごく久しぶりにベルの顔を見た気がするわ」
嬉しそうに笑うシルヴィア。
慣れない生活は毎日あっという間で、目まぐるしくて。
兄からいつでも公爵家に逃げ帰って来ていいよ、と言われた手前、意地でも帰ってやるもんかという反抗心もあって。
シルヴィアは家を出て以降一度も実家に立ち寄っていなかった。
「本当ですね。シル様がストラル社に本格的に入社してしまったら、月の番犬としては大打撃ですね」
「大袈裟ね。全部ベルの手腕でしょ?」
「そんなことはありませんよ。私は初めて会った時からずっとシル様に助けて頂いていますよ」
シルヴィアのお茶会等での宣伝のおかげで、ドレスや小物が上流階級のお嬢様御用達にまで成長。
特に服飾系の分野は右肩上がりで、しっかり基盤を築いたことでベルは今ようやく自分がやりたかった分野に本格的に着手できるようになった。
シルヴィアはドレスを着てお茶会に参加しただけよ、というが社交界でのシルヴィアの影響は大きい。
他国の王族の目に止まるくらいには。
「私との初対面なんて、最悪でしょう。何せ私、ベルに紅茶ぶっかけてるし」
ベルが兄の婚約者候補として公爵家に足を踏み入れた日、シルヴィアは他の候補者の時と同様に彼女を追い出すための意地悪をした。
今思い出しても、許されるような行為ではなかったというのに。
「あら、素敵なメイド服を用意してくださっていたじゃありませんか?」
あれ、結構気に入っていたのですよ? と言ってベルは楽しげに笑う。
「あの時の私は、これからどうやって公爵家に馴染もうかとそれなりに緊張していたのですけれど。シル様のおかげであっという間に馴染めましたし」
何せ婚約者がアレでしたから、と出会った当初のルキの残念さ具合を引き合いに出し、
「私はずっとシル様に救われているのです」
シルヴィアに感謝を伝えるベル。
そんなベルを見ながら、救われているのは自分の方だとシルヴィアは思う。
ベルと出会っていなければ、自分の人生を自分で選ぼうなんてきっと考えもしなかった。
公爵家は広くて立派だったけれど、父も兄もいないあの家はいつも寂しかった。
一人でうずくまり、漏れ聞こえてくる沢山の悪意から必死で身を守っていた小さなシルヴィアはもういない。
「あらそう? ならこれからも私に感謝し続けてよね!」
勝手にどこかにいなくなったら許さなくってよ? とわざと尊大に言ったシルヴィアに、
「ええ。どこにも行きませんし、私はシル様の味方です」
そう宣言したベルは、
「シル様宛てなので、お渡しします。どうされるかはシル様がお決めください」
一枚の封筒をシルヴィアに渡す。
封の切られていないそれを見て、シルヴィアの顔色が変わる。
その招待状は、王家主催であることが一目で分かる紋章が入っていた。
「なんだか、すごく久しぶりにベルの顔を見た気がするわ」
嬉しそうに笑うシルヴィア。
慣れない生活は毎日あっという間で、目まぐるしくて。
兄からいつでも公爵家に逃げ帰って来ていいよ、と言われた手前、意地でも帰ってやるもんかという反抗心もあって。
シルヴィアは家を出て以降一度も実家に立ち寄っていなかった。
「本当ですね。シル様がストラル社に本格的に入社してしまったら、月の番犬としては大打撃ですね」
「大袈裟ね。全部ベルの手腕でしょ?」
「そんなことはありませんよ。私は初めて会った時からずっとシル様に助けて頂いていますよ」
シルヴィアのお茶会等での宣伝のおかげで、ドレスや小物が上流階級のお嬢様御用達にまで成長。
特に服飾系の分野は右肩上がりで、しっかり基盤を築いたことでベルは今ようやく自分がやりたかった分野に本格的に着手できるようになった。
シルヴィアはドレスを着てお茶会に参加しただけよ、というが社交界でのシルヴィアの影響は大きい。
他国の王族の目に止まるくらいには。
「私との初対面なんて、最悪でしょう。何せ私、ベルに紅茶ぶっかけてるし」
ベルが兄の婚約者候補として公爵家に足を踏み入れた日、シルヴィアは他の候補者の時と同様に彼女を追い出すための意地悪をした。
今思い出しても、許されるような行為ではなかったというのに。
「あら、素敵なメイド服を用意してくださっていたじゃありませんか?」
あれ、結構気に入っていたのですよ? と言ってベルは楽しげに笑う。
「あの時の私は、これからどうやって公爵家に馴染もうかとそれなりに緊張していたのですけれど。シル様のおかげであっという間に馴染めましたし」
何せ婚約者がアレでしたから、と出会った当初のルキの残念さ具合を引き合いに出し、
「私はずっとシル様に救われているのです」
シルヴィアに感謝を伝えるベル。
そんなベルを見ながら、救われているのは自分の方だとシルヴィアは思う。
ベルと出会っていなければ、自分の人生を自分で選ぼうなんてきっと考えもしなかった。
公爵家は広くて立派だったけれど、父も兄もいないあの家はいつも寂しかった。
一人でうずくまり、漏れ聞こえてくる沢山の悪意から必死で身を守っていた小さなシルヴィアはもういない。
「あらそう? ならこれからも私に感謝し続けてよね!」
勝手にどこかにいなくなったら許さなくってよ? とわざと尊大に言ったシルヴィアに、
「ええ。どこにも行きませんし、私はシル様の味方です」
そう宣言したベルは、
「シル様宛てなので、お渡しします。どうされるかはシル様がお決めください」
一枚の封筒をシルヴィアに渡す。
封の切られていないそれを見て、シルヴィアの顔色が変わる。
その招待状は、王家主催であることが一目で分かる紋章が入っていた。