公爵令嬢の婚活事情〜王太子妃になりたくないので、好きな人と契約結婚はじめました〜
2枚目のエプロンを身につけたシルヴィアに掃除の仕方を教えつつ、
「なんで急にこんなに大量の卵を割り出したの?」
とハルはシルヴィアに尋ねる。
「えっと……自分じゃどうにもできないような嫌なことがあって。でも、"昨日までの自分"にできなかった事が"今日の自分"ならできた、って思えたら自信がつくかな、って……思って」
卵くらいで大袈裟な、と思われるかもしれない。
でもシルヴィアにとっては"運命"を変えるんだというくらいの意気込みで。
勝負を挑む前に、弱気な自分に負けたくなくて。
「いっぱい、失敗したけど。でも、私にだってできたわ!」
ぐっと自信満々にそう言ったシルヴィアは、
「私、諦めの悪さには自信があるのっ!」
ふふっと得意げに胸を張る。
「失敗しちゃった分は今からおっきなプリンにするの! 庶民にはバケツプリンっていう素敵なスイーツがあるんですって!!」
卵を無駄にしない方法だってちゃんと考えてるんだから、と笑うその楽しげな表情は初めて彼女を見かけた時と同じく眩しくて。
失敗を恐れない彼女が、羨ましくなる。
「……ていうか、最初は養鶏場の卵を全部買い占めようとしたの?」
苦笑気味に話の続きを促すハルに、
「ううん、近隣の養鶏場の経営権ごと全部買い占めようかなって。そしたらいつでも練習できるし」
ふるふると首をふって否定したシルヴィアは、
「でもベルに卵の価格高騰してナツが泣いちゃうって言われたから」
養鶏場の買い上げはやめたのよとけろっと常識外れな事を宣うお嬢様。
「……うーん、ダメなとこはそこじゃないんだけど」
きょとんと首を傾げるシルヴィアを見る。
可愛いし面白いから、まっ、いっか⭐︎なんて言ってきっと今までシルヴィアの斜め上の発想を放置してきただろうベルの姿が目に浮かび、姉は何をやっているんだろかと頭を抱えたくなるハル。
が、シルヴィアが何かやらかしても可愛い可愛いとそのまま愛でていた自分も同罪かと思い直しハルは苦笑した。
「あ、でもこの綺麗に割れた卵はハルさんにプレゼント!」
あらかた掃除が終わったところで卵の入った器を慎重に手にしたシルヴィアはそう言った。
「せっかく苦労して割ったのに?」
初めての成功作でしょ? といったハルに、
「そうよ、すっごく頑張ったんだから!」
そう答えたシルヴィアは、
「だから、ハルさんにあげる」
勢いよく差し出すと、
「きっと、ご利益あるわよ! だって私の成功作だもの」
元気のお裾分け、と笑った。
ハルは驚いて目を丸くする。
特に何かを話したわけではなかったのに、シルヴィアはいつ自分が気落ちしているのだと気づいたのだろうか、と。
「あ、でもこのままっていうのも……卵焼きなら頑張ればっ」
はいっと差し出したのに固まってしまったハルを見て、ハルは美味しいお菓子を作ってくれたんだったと思い出したシルヴィアは、生のまま卵を渡すのもいかがなものかと思い直し、一旦引っ込めようとする。
が、シルヴィアが手を引くより早く器を取り上げたハルは、
「これはこのまま目玉焼きにでもしようか。カリカリのベーコンとチーズのせ」
とメニューを提案する。
「ふわぁぁーーっ! 絶対美味しいやつ」
半熟卵最高っと言ったシルヴィアの髪をクシャッと撫でたハルは、
「しょうがないなぁ、じゃあ半分こね」
そう言って穏やかに笑う。
「やったぁ」
すぐ準備するわ! とお皿を並べはじめたシルヴィアを見ながら、ハルはいつの間にか憂鬱な気持ちが落ち着いている自分に気がついた。
「なんで急にこんなに大量の卵を割り出したの?」
とハルはシルヴィアに尋ねる。
「えっと……自分じゃどうにもできないような嫌なことがあって。でも、"昨日までの自分"にできなかった事が"今日の自分"ならできた、って思えたら自信がつくかな、って……思って」
卵くらいで大袈裟な、と思われるかもしれない。
でもシルヴィアにとっては"運命"を変えるんだというくらいの意気込みで。
勝負を挑む前に、弱気な自分に負けたくなくて。
「いっぱい、失敗したけど。でも、私にだってできたわ!」
ぐっと自信満々にそう言ったシルヴィアは、
「私、諦めの悪さには自信があるのっ!」
ふふっと得意げに胸を張る。
「失敗しちゃった分は今からおっきなプリンにするの! 庶民にはバケツプリンっていう素敵なスイーツがあるんですって!!」
卵を無駄にしない方法だってちゃんと考えてるんだから、と笑うその楽しげな表情は初めて彼女を見かけた時と同じく眩しくて。
失敗を恐れない彼女が、羨ましくなる。
「……ていうか、最初は養鶏場の卵を全部買い占めようとしたの?」
苦笑気味に話の続きを促すハルに、
「ううん、近隣の養鶏場の経営権ごと全部買い占めようかなって。そしたらいつでも練習できるし」
ふるふると首をふって否定したシルヴィアは、
「でもベルに卵の価格高騰してナツが泣いちゃうって言われたから」
養鶏場の買い上げはやめたのよとけろっと常識外れな事を宣うお嬢様。
「……うーん、ダメなとこはそこじゃないんだけど」
きょとんと首を傾げるシルヴィアを見る。
可愛いし面白いから、まっ、いっか⭐︎なんて言ってきっと今までシルヴィアの斜め上の発想を放置してきただろうベルの姿が目に浮かび、姉は何をやっているんだろかと頭を抱えたくなるハル。
が、シルヴィアが何かやらかしても可愛い可愛いとそのまま愛でていた自分も同罪かと思い直しハルは苦笑した。
「あ、でもこの綺麗に割れた卵はハルさんにプレゼント!」
あらかた掃除が終わったところで卵の入った器を慎重に手にしたシルヴィアはそう言った。
「せっかく苦労して割ったのに?」
初めての成功作でしょ? といったハルに、
「そうよ、すっごく頑張ったんだから!」
そう答えたシルヴィアは、
「だから、ハルさんにあげる」
勢いよく差し出すと、
「きっと、ご利益あるわよ! だって私の成功作だもの」
元気のお裾分け、と笑った。
ハルは驚いて目を丸くする。
特に何かを話したわけではなかったのに、シルヴィアはいつ自分が気落ちしているのだと気づいたのだろうか、と。
「あ、でもこのままっていうのも……卵焼きなら頑張ればっ」
はいっと差し出したのに固まってしまったハルを見て、ハルは美味しいお菓子を作ってくれたんだったと思い出したシルヴィアは、生のまま卵を渡すのもいかがなものかと思い直し、一旦引っ込めようとする。
が、シルヴィアが手を引くより早く器を取り上げたハルは、
「これはこのまま目玉焼きにでもしようか。カリカリのベーコンとチーズのせ」
とメニューを提案する。
「ふわぁぁーーっ! 絶対美味しいやつ」
半熟卵最高っと言ったシルヴィアの髪をクシャッと撫でたハルは、
「しょうがないなぁ、じゃあ半分こね」
そう言って穏やかに笑う。
「やったぁ」
すぐ準備するわ! とお皿を並べはじめたシルヴィアを見ながら、ハルはいつの間にか憂鬱な気持ちが落ち着いている自分に気がついた。