公爵令嬢の婚活事情〜王太子妃になりたくないので、好きな人と契約結婚はじめました〜
自由登校、とはいえ完全に卒業式までおサボりしていいわけではなく、学園に足を運ばなくてはならない日もある。
例えば、卒業パーティの練習とか。
ダンス自体は苦手ではない。小さな頃から公爵令嬢として城に上がることもあったので、むしろ得意な方だと思う。
だからみんなのお手本として教師から指名されたのは光栄なことだった。
ダンスの相手がカルロス殿下でなければ、だが。
「一曲お相手願えますか? レディー」
息を呑むほど美しい洗練された動作に、整った顔立ち。
柔らかな色と甘い雰囲気に周りからは黄色悲鳴が上がる。
ああ、殴りたいこの笑顔、と思いつつ、
「ええ、喜んで」
シルヴィアは大人になるのよ、と自分に言い聞かせてカルロスの手を取った。
音楽が響き生徒たちに見られながらホールの中心でダンスを踊る。
カルロスのリードはとても上手く踊りやすい。
難なく終われそうね、とシルヴィアがほっとしたところで、
「久しぶりだね、シヴィ」
こそっとカルロスが小声で話しかけてきた。
「恐れながら殿下。私は殿下と愛称で呼び合う間柄にございません。周りが勘違いするような行動はお控えくださいませ」
花嫁探しにも影響するのでは? とツンと突っぱねるシルヴィアに、
「はは、そう寂しいことを言うなよ。君に会えない日々を大人しく過ごしていたというのに」
取り合わないカルロスは、
「学園にいる間の立場は対等。殿下呼びは必要ない」
気軽にカルロって呼んでくれていいぞと笑う。
「では、お言葉に甘えまして」
ふふっと笑顔をキープしたまま、
『距離の詰め方が可笑しいって言ってるの! いい加減鬱陶しいし、嫌だって言ってるの分からない? しつこい男は嫌われるって知らないの?』
シルヴィアはイスラン王国公用語に切り替えて王太子相手にずけずけと罵倒するも。
「おおーさすがシヴィ。発音も完璧だ。いつでも我が国に来られるな」
ケロッとしていてノーダメージどころか褒めてくる。
いっそのことわざと足を踏んでやろうかと仕掛けても、ノールックで躱されるどころかステップ間違いまでフォローされる始末。
コイツ、マジで楽しんでるわね!? と内心で毒づくシルヴィアに、
「シヴィ、国が存続し続けるために必要なモノはなんだと思う?」
と質問が飛んでくる。
「さぁ、私のような一介の臣民には分かりかねますわ」
「国同士の繋がり」
わかっている癖に、とにこやかに笑うカルロスは淡々とした口調で言葉を紡ぐ。
「人の欲は果てしない。より豊かで、より発展した生活を目指したいと思うのは当然のことだろう」
黙ったまま耳を傾けるシルヴィアに、
「その結果、わずかな資源を巡って戦争が勃発するのは自然の摂理とも言える。が、それを平和的に解決するのもまた王族の役目だ」
オパールの瞳がそう告げる。
お互いが利益を得るために、繋がりをより強固にするために昔から取られてきた手法の一つが政略結婚だ。
「まぁ、王族とは不自由な生き物でございますわね」
他人事、とばかりにさらっと流したシルヴィアに、
「公爵家に直接打診しないのは俺なりの配慮のつもりだ」
君とは仲良くしたいからね、とカルロスは微笑む。
「毛嫌いせずに一度考えてみるといい。シヴィにもメリットは沢山あるはずだ。王族と縁続きになれば、君の家門の商会も益々発展するだろうし」
綺麗にダンスを踊り終え、礼をするとシルヴィアに傅いてその手に軽くキスを落とし、
「卒業パーティーでも君と踊れることを楽しみにしているよ」
自信満々にそう言ってシルヴィアの手を離した。
例えば、卒業パーティの練習とか。
ダンス自体は苦手ではない。小さな頃から公爵令嬢として城に上がることもあったので、むしろ得意な方だと思う。
だからみんなのお手本として教師から指名されたのは光栄なことだった。
ダンスの相手がカルロス殿下でなければ、だが。
「一曲お相手願えますか? レディー」
息を呑むほど美しい洗練された動作に、整った顔立ち。
柔らかな色と甘い雰囲気に周りからは黄色悲鳴が上がる。
ああ、殴りたいこの笑顔、と思いつつ、
「ええ、喜んで」
シルヴィアは大人になるのよ、と自分に言い聞かせてカルロスの手を取った。
音楽が響き生徒たちに見られながらホールの中心でダンスを踊る。
カルロスのリードはとても上手く踊りやすい。
難なく終われそうね、とシルヴィアがほっとしたところで、
「久しぶりだね、シヴィ」
こそっとカルロスが小声で話しかけてきた。
「恐れながら殿下。私は殿下と愛称で呼び合う間柄にございません。周りが勘違いするような行動はお控えくださいませ」
花嫁探しにも影響するのでは? とツンと突っぱねるシルヴィアに、
「はは、そう寂しいことを言うなよ。君に会えない日々を大人しく過ごしていたというのに」
取り合わないカルロスは、
「学園にいる間の立場は対等。殿下呼びは必要ない」
気軽にカルロって呼んでくれていいぞと笑う。
「では、お言葉に甘えまして」
ふふっと笑顔をキープしたまま、
『距離の詰め方が可笑しいって言ってるの! いい加減鬱陶しいし、嫌だって言ってるの分からない? しつこい男は嫌われるって知らないの?』
シルヴィアはイスラン王国公用語に切り替えて王太子相手にずけずけと罵倒するも。
「おおーさすがシヴィ。発音も完璧だ。いつでも我が国に来られるな」
ケロッとしていてノーダメージどころか褒めてくる。
いっそのことわざと足を踏んでやろうかと仕掛けても、ノールックで躱されるどころかステップ間違いまでフォローされる始末。
コイツ、マジで楽しんでるわね!? と内心で毒づくシルヴィアに、
「シヴィ、国が存続し続けるために必要なモノはなんだと思う?」
と質問が飛んでくる。
「さぁ、私のような一介の臣民には分かりかねますわ」
「国同士の繋がり」
わかっている癖に、とにこやかに笑うカルロスは淡々とした口調で言葉を紡ぐ。
「人の欲は果てしない。より豊かで、より発展した生活を目指したいと思うのは当然のことだろう」
黙ったまま耳を傾けるシルヴィアに、
「その結果、わずかな資源を巡って戦争が勃発するのは自然の摂理とも言える。が、それを平和的に解決するのもまた王族の役目だ」
オパールの瞳がそう告げる。
お互いが利益を得るために、繋がりをより強固にするために昔から取られてきた手法の一つが政略結婚だ。
「まぁ、王族とは不自由な生き物でございますわね」
他人事、とばかりにさらっと流したシルヴィアに、
「公爵家に直接打診しないのは俺なりの配慮のつもりだ」
君とは仲良くしたいからね、とカルロスは微笑む。
「毛嫌いせずに一度考えてみるといい。シヴィにもメリットは沢山あるはずだ。王族と縁続きになれば、君の家門の商会も益々発展するだろうし」
綺麗にダンスを踊り終え、礼をするとシルヴィアに傅いてその手に軽くキスを落とし、
「卒業パーティーでも君と踊れることを楽しみにしているよ」
自信満々にそう言ってシルヴィアの手を離した。