公爵令嬢の婚活事情〜王太子妃になりたくないので、好きな人と契約結婚はじめました〜
思い出しただけでも胃もたれしそう、とシルヴィアがため息をついたところで、
「シルヴィア・ブルーノ! 休んでばかりいるあなたに今年の卒業式の主役の座は渡しませんわ!!」
ビシッと扇子でさしながらそう宣言された。
シルヴィアは視線を上げ、声の主を見る。彼女の名前はメーベル・ラドン公爵令嬢。
同じ公爵家ということもあり、勝手にライバル認定され幼少期から何かと突っかかってくる、ある意味幼馴染的存在である。
「別に狙ってないけど……」
ピンクのバラの君とは俗に言うミスコンのようなモノで、自薦他薦問わずエントリーされ生徒の投票で決まる。
ちなみに男性側も投票があり、人気ナンバーワン同士の男女が卒業パーティーでのファーストダンスを務めることになっている。
男性側はおそらくカルロス殿下一択だからシルヴィアとしては避けたいところなのだけど。
「嘘おっしゃい! では、何故あなたがエントリーされているのです!!」
予選のアピール会場にいなかった癖にっとハンカチを噛みながら悔しげに訴えるメーベルに、知らんがなと心の底から突っ込むシルヴィア。
名前が上がった時点で早々に辞退届を出したはずなのに何故最終投票まで残っているのか自分でも謎である。
(まぁ、心当たりはなくもないけれど)
と、その心当たりを思い浮かべ、また気持ちが沈む。
一見無害そうに見える、みんなが憧れる王子様。
王家からの事実上の夜会への召集。
学園に来ないのは輿入れ準備で忙しい、なんて一つもかすっていない噂話。
誰かの引いたレールに乗せられて、なす術もなく手足を絡め取られ、海の底に引き摺られるような感覚に、息が苦しくなる。
私、既婚者なの! と堂々と突っぱねてしまいたいのに、無闇矢鱈と結婚していることを口にしてはダメというハルとの約束のせいで周りはちっとも静かにならない。
「……契約結婚の意味、ないじゃない」
ぼそっと恨めしげにつぶやいたシルヴィアに、
「何かいいまして?」
聞いていますの? とご立腹気味のメーベル。
そういえば彼女もカルロス殿下狙いだっけ? と思い出したシルヴィアは、
「私、卒業パーティーサボりたい」
代れるものなら代わってよと嘆く。
私の気持ちなんてどうでもいいというのなら、もういっそのこと全部放り出してどこか遠くに行ってしまいたい。
そうぼやいたシルヴィアに、
「まぁ、シルヴィア・ブルーノ。敵前逃亡なんてこの私が許さなくってよ!」
私を恐れるのは分かりますけどと的外れな事を言いパチンと扇子を手で叩いたメーベルから、
「第一、先程の無様なダンスはなんですか! 公爵令嬢でありながら友好国の王太子であるカルロス殿下を蔑ろにするなんて」
それでも誇り高き臣民ですか! と叱責が飛んできた。
「シルヴィア・ブルーノ! 休んでばかりいるあなたに今年の卒業式の主役の座は渡しませんわ!!」
ビシッと扇子でさしながらそう宣言された。
シルヴィアは視線を上げ、声の主を見る。彼女の名前はメーベル・ラドン公爵令嬢。
同じ公爵家ということもあり、勝手にライバル認定され幼少期から何かと突っかかってくる、ある意味幼馴染的存在である。
「別に狙ってないけど……」
ピンクのバラの君とは俗に言うミスコンのようなモノで、自薦他薦問わずエントリーされ生徒の投票で決まる。
ちなみに男性側も投票があり、人気ナンバーワン同士の男女が卒業パーティーでのファーストダンスを務めることになっている。
男性側はおそらくカルロス殿下一択だからシルヴィアとしては避けたいところなのだけど。
「嘘おっしゃい! では、何故あなたがエントリーされているのです!!」
予選のアピール会場にいなかった癖にっとハンカチを噛みながら悔しげに訴えるメーベルに、知らんがなと心の底から突っ込むシルヴィア。
名前が上がった時点で早々に辞退届を出したはずなのに何故最終投票まで残っているのか自分でも謎である。
(まぁ、心当たりはなくもないけれど)
と、その心当たりを思い浮かべ、また気持ちが沈む。
一見無害そうに見える、みんなが憧れる王子様。
王家からの事実上の夜会への召集。
学園に来ないのは輿入れ準備で忙しい、なんて一つもかすっていない噂話。
誰かの引いたレールに乗せられて、なす術もなく手足を絡め取られ、海の底に引き摺られるような感覚に、息が苦しくなる。
私、既婚者なの! と堂々と突っぱねてしまいたいのに、無闇矢鱈と結婚していることを口にしてはダメというハルとの約束のせいで周りはちっとも静かにならない。
「……契約結婚の意味、ないじゃない」
ぼそっと恨めしげにつぶやいたシルヴィアに、
「何かいいまして?」
聞いていますの? とご立腹気味のメーベル。
そういえば彼女もカルロス殿下狙いだっけ? と思い出したシルヴィアは、
「私、卒業パーティーサボりたい」
代れるものなら代わってよと嘆く。
私の気持ちなんてどうでもいいというのなら、もういっそのこと全部放り出してどこか遠くに行ってしまいたい。
そうぼやいたシルヴィアに、
「まぁ、シルヴィア・ブルーノ。敵前逃亡なんてこの私が許さなくってよ!」
私を恐れるのは分かりますけどと的外れな事を言いパチンと扇子を手で叩いたメーベルから、
「第一、先程の無様なダンスはなんですか! 公爵令嬢でありながら友好国の王太子であるカルロス殿下を蔑ろにするなんて」
それでも誇り高き臣民ですか! と叱責が飛んできた。