公爵令嬢の婚活事情〜王太子妃になりたくないので、好きな人と契約結婚はじめました〜
「そんなに熱心に踊ってるのは卒業パーティーの練習?」
思いがけずハルに会えたこととこっそり練習しているところを見られて恥ずかしいのとで真っ赤になってしまったシルヴィアはこくこくと何度も頷く。
「シルちゃん、十分上手なのに、まだ頑張るの?」
えらいえらいとふわっと優しく髪を撫でたハルに、
「このまま行くと多分カルロス殿下と踊ることになるから」
ぼそっとつぶやくシルヴィア。
その言葉に反応しハルの手が止まる。
王太子と踊るために頑張っているのかと思い、何故かもやっとしたハルに、
「ええ。ステップを間違えることなく、華麗にかつ盛大に足を踏んでやろうと思って」
次は躱させないわ! と真顔でシルヴィアは宣言する。
「……足」
「ええ、足よ」
「踏むの?」
「踏むわ。思いっきり」
なんなら小指あたりをピンポイントで、と意気込むシルヴィア。
言うまでもなく、ダンスは相手の足を踏む競技ではない。
だというのにシルヴィアはカルロス殿下の足を華麗に踏むために技術練習をしているのだという。
しかも次は躱させない、ということはすでに踏もうと実践後の再挑戦ということで?
シルヴィアとのやり取りを反芻すること数秒。
「ふっ、ははっ……」
肩を震わせるどころか、なんならお腹を抱えて急に大爆笑しはじめたハル。
「足。足って……」
くくっとツボにはまったらしく笑いが収まらないハルにシルヴィアは目を丸くする。
普段静かに綺麗に微笑む穏やかなハルの姿しか知らないシルヴィアは、まるで子どもみたいな笑い方をするハルにただ驚いて。
「あーおっかしい。本当、君って子は」
今まで知らなかったハルの一面にどうしようもなく心が惹かれときめいた。
沢山笑ったそのあとで、
「どうせ練習するなら相手がいた方が良くない?」
ダンスは結構得意分野だよ、とハルがシルヴィアに手を差し出す。
つまり、ダンスの練習に付き合ってくれるのだという。
しかも普通のダンスではなく、相手の足を華麗に盛大に踏みつける練習に。
「へ? えっ? えーー? だ、ダメよ! 絶対ダメっ」
「どうして?」
「だって、足踏まれたら絶対痛いもの!」
ハルさんの足を踏むなんてと首を振り断るシルヴィアに、
「王太子殿下の足は踏む気満々だったのに?」
クスッと笑うハル。
「そうだけど、でもっ」
好きな人の足をわざと踏むなんて無理! と声には出さずにシルヴィアはブンブン首を振る。
「そっか、残念」
引っ込められた手に、せっかくハルと踊るチャンスだったのにと内心でガッカリするシルヴィア。
しゅん、としてしまったシルヴィアの頭にふわっと優しい手がのる。
「じゃあ足を踏む練習はここまでにして、今日はお茶でもして帰ろうか?」
実は直帰でこの後時間があるんだと言ったハルに、
「行きますっ!!」
食い気味にそう答えたシルヴィアとてもご機嫌で。
朝の沈んだ様子は見られない。
「今日久しぶりに友人に会って聞いたんだけど新しいカフェがオープンしたみたいで」
行ってみたかったの、とくるくる表情の変わるシルヴィアは見ていて思う。やはり彼女に憂い顔は似合わない、と。
「ハルさん、どうしたの?」
早く行かなきゃ、本日のケーキ売り切れちゃうかもっ! と急かすシルヴィアを見ながら思う。
『王太子妃になんてなりたくないの』
それが彼女の望みで。
『どちらの国とも友好的でありたいと願っている』
というのがこの国の方針だというのなら。
「僕、パズルは結構得意なんだ」
望む形の枠にピースを当てはめていけばいい。
「うん? 知ってますけど」
今からパズル買いに行くの? と首を傾げるシルヴィアの頭を優しく撫でながら、
「一緒にやる?」
すっごい難解なやつ、とハルは笑った。
思いがけずハルに会えたこととこっそり練習しているところを見られて恥ずかしいのとで真っ赤になってしまったシルヴィアはこくこくと何度も頷く。
「シルちゃん、十分上手なのに、まだ頑張るの?」
えらいえらいとふわっと優しく髪を撫でたハルに、
「このまま行くと多分カルロス殿下と踊ることになるから」
ぼそっとつぶやくシルヴィア。
その言葉に反応しハルの手が止まる。
王太子と踊るために頑張っているのかと思い、何故かもやっとしたハルに、
「ええ。ステップを間違えることなく、華麗にかつ盛大に足を踏んでやろうと思って」
次は躱させないわ! と真顔でシルヴィアは宣言する。
「……足」
「ええ、足よ」
「踏むの?」
「踏むわ。思いっきり」
なんなら小指あたりをピンポイントで、と意気込むシルヴィア。
言うまでもなく、ダンスは相手の足を踏む競技ではない。
だというのにシルヴィアはカルロス殿下の足を華麗に踏むために技術練習をしているのだという。
しかも次は躱させない、ということはすでに踏もうと実践後の再挑戦ということで?
シルヴィアとのやり取りを反芻すること数秒。
「ふっ、ははっ……」
肩を震わせるどころか、なんならお腹を抱えて急に大爆笑しはじめたハル。
「足。足って……」
くくっとツボにはまったらしく笑いが収まらないハルにシルヴィアは目を丸くする。
普段静かに綺麗に微笑む穏やかなハルの姿しか知らないシルヴィアは、まるで子どもみたいな笑い方をするハルにただ驚いて。
「あーおっかしい。本当、君って子は」
今まで知らなかったハルの一面にどうしようもなく心が惹かれときめいた。
沢山笑ったそのあとで、
「どうせ練習するなら相手がいた方が良くない?」
ダンスは結構得意分野だよ、とハルがシルヴィアに手を差し出す。
つまり、ダンスの練習に付き合ってくれるのだという。
しかも普通のダンスではなく、相手の足を華麗に盛大に踏みつける練習に。
「へ? えっ? えーー? だ、ダメよ! 絶対ダメっ」
「どうして?」
「だって、足踏まれたら絶対痛いもの!」
ハルさんの足を踏むなんてと首を振り断るシルヴィアに、
「王太子殿下の足は踏む気満々だったのに?」
クスッと笑うハル。
「そうだけど、でもっ」
好きな人の足をわざと踏むなんて無理! と声には出さずにシルヴィアはブンブン首を振る。
「そっか、残念」
引っ込められた手に、せっかくハルと踊るチャンスだったのにと内心でガッカリするシルヴィア。
しゅん、としてしまったシルヴィアの頭にふわっと優しい手がのる。
「じゃあ足を踏む練習はここまでにして、今日はお茶でもして帰ろうか?」
実は直帰でこの後時間があるんだと言ったハルに、
「行きますっ!!」
食い気味にそう答えたシルヴィアとてもご機嫌で。
朝の沈んだ様子は見られない。
「今日久しぶりに友人に会って聞いたんだけど新しいカフェがオープンしたみたいで」
行ってみたかったの、とくるくる表情の変わるシルヴィアは見ていて思う。やはり彼女に憂い顔は似合わない、と。
「ハルさん、どうしたの?」
早く行かなきゃ、本日のケーキ売り切れちゃうかもっ! と急かすシルヴィアを見ながら思う。
『王太子妃になんてなりたくないの』
それが彼女の望みで。
『どちらの国とも友好的でありたいと願っている』
というのがこの国の方針だというのなら。
「僕、パズルは結構得意なんだ」
望む形の枠にピースを当てはめていけばいい。
「うん? 知ってますけど」
今からパズル買いに行くの? と首を傾げるシルヴィアの頭を優しく撫でながら、
「一緒にやる?」
すっごい難解なやつ、とハルは笑った。