公爵令嬢の婚活事情〜王太子妃になりたくないので、好きな人と契約結婚はじめました〜
「まぁ、そんなわけで。シルヴィアにも力を貸してやってくれない? シルが遺憾なく才能を発揮できるのは、ハルがいる時だと思うから」
「別にそんなことはないと思いますけど」
「そんなことあるんだよ」
普段から仕事以外鈍いだの残念だのと散々ベルに言われるルキでさえ気づくほどにシルヴィアの恋心は明確で。
シルヴィアが大好きな人の為ならいつも以上に力を発揮できる……とは言えないので。
「シル、褒められて伸びるタイプだから」
早くハルに気づいてもらえるといいなと祈りつつ、言葉を濁すルキ。
そんなルキの心情など知るはずもないハルは、
「あ、それは分かります」
肯定し、ポンと手を打つ。
相談事を抱えハルの元を訪れるシルヴィアは、いつもその後の報告までしてくれる。
『見て見て!』
できたの! と嬉々として報告するその様は褒めて褒めてと言わんばかりで。
犬だったら尻尾をブンブン振っているんだろうなと思うくらい可愛くて。
「つい、ご褒美あげたくなっちゃうんですよね」
次何作ろうかなーと楽しげにご褒美を考えるハルを見ながら、
「うん、ヒトの妹をあんな自由人に育てた責任を是非ともハルにとって欲しいと思う。切実に」
加減知らずのシルヴィアが今までやらかしたアレコレの後始末を思い出し、胃が痛いつぶやいたルキは盛大にため息を漏らす。
そう、シルヴィアは褒めて伸びるタイプだ。
元々の素質もあったのだろう。
が、こうも自由奔放にやりたい放題伸びのびやるようになったのは、ハルによる全肯定と助言とご褒美のせいだった。
その結果の"今"である。
が、そうさせた当人は無自覚で。
「えっ? それは僕ではなく姉さんの影響では?」
もしくは兄かベロニカのせいでは? と首を傾げ本気で分からないというハルを前に、ルキは"お前も大概だからな"という言葉をなんとか飲み込んだ。
黙々と書類に目を通すハルを眺めながら、ルキは差し出されたコーヒーを飲む。
「ベルが淹れてくれるコーヒーと同じ味がする」
美味しい、と感嘆の声を上げるルキに、
「まぁ、姉さんが行きつけのカフェでアルバイトしてましたから」
書類から視線を上げることなく、ハルは答える。
「ああ、あの店?」
「ええ、なんせ週8でアルバイト入れる人だったんで。倒れた時に代打頼まれてもいいように、姉さんの在学中はわざとアルバイト先被せてましたから」
なので、姉のできることは大抵できますよ、とハルは当然のようにそう言った。
「……ベルに恋人がいなかった原因の8割ハルじゃないか?」
多分本人が恋愛に興味がなかったのもあるだろうが、社交的で面倒みのいいベルに惹かれない男が全くいなかったというのが不思議だった。
まぁ、ベルはブラコンだしななんて思っていたけれど。
「いいんですよ、碌なの寄ってこないから。特に貴族の令息は」
女のくせに生意気だなんて心底どうでもいいことでケチつけるくせに、ベルを下卑た目で見る。
愛人の子なんて恥ずべき存在、どう扱ってもいいとばかりに。
「そんな輩に僕の大事な姉を近づけさせると思いますか?」
「つまりハルが番犬よろしく虫除けしてた、と」
「別に姉さんの自由を侵害するようなことはしてないですよ」
いくつか悪縁を潰しただけで、とハルは悪びれることなくしれっとそう言った。
本人の預かり知らぬところで暗躍なんて、本来なら嗜めるべきなんだろうけれど。
そのおかげでベルと縁があり、なおかつ義弟との関係は良好なので。
「俺の目の届かないところでは今後もフォローよろしく」
ベルの行動は予測不能なので頼もしすぎる義弟に今後も頼ることにした。
「別にそんなことはないと思いますけど」
「そんなことあるんだよ」
普段から仕事以外鈍いだの残念だのと散々ベルに言われるルキでさえ気づくほどにシルヴィアの恋心は明確で。
シルヴィアが大好きな人の為ならいつも以上に力を発揮できる……とは言えないので。
「シル、褒められて伸びるタイプだから」
早くハルに気づいてもらえるといいなと祈りつつ、言葉を濁すルキ。
そんなルキの心情など知るはずもないハルは、
「あ、それは分かります」
肯定し、ポンと手を打つ。
相談事を抱えハルの元を訪れるシルヴィアは、いつもその後の報告までしてくれる。
『見て見て!』
できたの! と嬉々として報告するその様は褒めて褒めてと言わんばかりで。
犬だったら尻尾をブンブン振っているんだろうなと思うくらい可愛くて。
「つい、ご褒美あげたくなっちゃうんですよね」
次何作ろうかなーと楽しげにご褒美を考えるハルを見ながら、
「うん、ヒトの妹をあんな自由人に育てた責任を是非ともハルにとって欲しいと思う。切実に」
加減知らずのシルヴィアが今までやらかしたアレコレの後始末を思い出し、胃が痛いつぶやいたルキは盛大にため息を漏らす。
そう、シルヴィアは褒めて伸びるタイプだ。
元々の素質もあったのだろう。
が、こうも自由奔放にやりたい放題伸びのびやるようになったのは、ハルによる全肯定と助言とご褒美のせいだった。
その結果の"今"である。
が、そうさせた当人は無自覚で。
「えっ? それは僕ではなく姉さんの影響では?」
もしくは兄かベロニカのせいでは? と首を傾げ本気で分からないというハルを前に、ルキは"お前も大概だからな"という言葉をなんとか飲み込んだ。
黙々と書類に目を通すハルを眺めながら、ルキは差し出されたコーヒーを飲む。
「ベルが淹れてくれるコーヒーと同じ味がする」
美味しい、と感嘆の声を上げるルキに、
「まぁ、姉さんが行きつけのカフェでアルバイトしてましたから」
書類から視線を上げることなく、ハルは答える。
「ああ、あの店?」
「ええ、なんせ週8でアルバイト入れる人だったんで。倒れた時に代打頼まれてもいいように、姉さんの在学中はわざとアルバイト先被せてましたから」
なので、姉のできることは大抵できますよ、とハルは当然のようにそう言った。
「……ベルに恋人がいなかった原因の8割ハルじゃないか?」
多分本人が恋愛に興味がなかったのもあるだろうが、社交的で面倒みのいいベルに惹かれない男が全くいなかったというのが不思議だった。
まぁ、ベルはブラコンだしななんて思っていたけれど。
「いいんですよ、碌なの寄ってこないから。特に貴族の令息は」
女のくせに生意気だなんて心底どうでもいいことでケチつけるくせに、ベルを下卑た目で見る。
愛人の子なんて恥ずべき存在、どう扱ってもいいとばかりに。
「そんな輩に僕の大事な姉を近づけさせると思いますか?」
「つまりハルが番犬よろしく虫除けしてた、と」
「別に姉さんの自由を侵害するようなことはしてないですよ」
いくつか悪縁を潰しただけで、とハルは悪びれることなくしれっとそう言った。
本人の預かり知らぬところで暗躍なんて、本来なら嗜めるべきなんだろうけれど。
そのおかげでベルと縁があり、なおかつ義弟との関係は良好なので。
「俺の目の届かないところでは今後もフォローよろしく」
ベルの行動は予測不能なので頼もしすぎる義弟に今後も頼ることにした。